答えのない時代に、メモが最強の武器になるーー。
そう言い切るのは日本一ノートを売る会社コクヨで働く下地寛也氏だ。トップ社員である彼自身が、コクヨ社内はもちろん、社外でも最前線で働くクリエイターやビジネスパーソンにインタビューを重ねてきた。そこから見えてきたことは、
◆トップクラスの人達は、メモを取り続けていること
◆そして、頭の中で考えるのではなく、書きながら考えていること
だった。
この連載では、『考える人のメモの技術』の著者である下地氏が、実際に集めたメモをベースに、あらゆる問題解決に効くメモ術を紹介していく。

同じ内容なのに「ほめられる企画書」と「スルーされる企画書」は一体何が違うのか?Photo: Adobe Stock

紙の上でキーワードを漂わせ、言葉の強弱を探る

 人の企画書を読んでも何がコンセプトなのかピンとこないなと思うことはないでしょうか。「あんな機能や、こんな機能もある。けど結局何が特徴なの?」って感じです。

 何が言いたいのかわからない人の企画は、項目の強弱がついておらず、複雑に感じてしまいます。

 ただ、いざ自分が企画を考えるとなると、シンプルな構造でコンセプトをまとめるのは難しいものです。そんなときにおススメの方法をご紹介しましょう。ポイントは2つあります。

1)書き出したキーワードを選んで強弱をつける(マーキングする)
2)マーキングしたキーワードの関係性を矢印でつなぐ(コネクトする)

 ということで「マーク&コネクト法」とややベタな名前をつけましたが、その効果は絶大です。

 わかりやすいように図の例示を使って解説します。「デジタルを活かした筆記具を企画する」というケースで見ていきましょう。

 まず、紙の上に自分が思いつくキーワード(提供価値、特徴、ニーズなど)を自由に書き出します。

 図で言うと、「子どもが使う」「思考の癖分析」「教科ごとの特性収集」「勝手に文字情報化」などなど。

キーワードを選んで強弱をつける

 頭の中にあった言葉を全部書き出すとスッキリします。

 そこで、1つ目のキーワードを選んで強弱をつけます(マーキングする)

 重要だと思ったキーワードをグルグルと囲んだり、アンダーラインを引く。星や二重丸などの印をつけておくなどしておきます。印のつけ方は明確に定義せず、手が動くままに任せていいでしょう。

 図の例だと、「子どもが使う」「勉強の頑張りを見える化」「ほめられる!」を囲み、「モチベーションに!」「書いた記録を(親に)送る」に下線を引きました。

 これでキーワードの強弱が見えてきます。

キーワードの関係性を矢印でつなぐ

 続いて2つ目のキーワードの関係性を矢印でつなぐ(コネクトする)

「このキーワードがメインで、こちらはサブだな」とか、
「このキーワードがまずあって、次にこれが来るな」といった感じです。

 そうすると、キーワードの中からコンセプトの核が見えてきます。

 上の図だと、

「子どもが使う」
 ↓
「勉強の頑張りを見える化」
 ↓
「書いた記録を(親に)送る」
 ↓
「ほめられる!」

 という流れで、

「勉強をした量が見える化されると子どもはモチベーションがあがる。
 それを親に伝えてほめられるデジタル筆記具」

 というコンセプトがメモの中から浮かび上がってくるでしょう。

 実際に、コクヨには【しゅくだいやる気ペン】というヒット商品があります。もちろん、このように単純なプロセスだけで発想が生まれたわけではありませんが、企画開発担当のコクヨの中井信彦さん曰く、いろんなことを調べてメモし、キーワードの組み合わせを考えながらコンセプトを練り上げていったそうです。

同じ内容なのに「ほめられる企画書」と「スルーされる企画書」は一体何が違うのか?画像提供:コクヨ株式会社

「マーク&コネクト法」はあらゆるアウトプットを考えるときに使えます。

 イベントの企画、営業戦略から、自分のキャリアを考えるときなどなど。

 なぜなら、頭の中にある無数のキーワードの優先順位をつけて関連づけることこそが、構造化の本質だからです。

(本原稿は、下地寛也著『考える人のメモの技術』から一部抜粋・改変したものです)