クレディ・スイスは破綻するのか?財務健全でも不安が倍増した本当の理由Photo:123RF

年明け以降の市場環境の悪化で投資銀行ビジネスが世界的に打撃を受けている。とりわけ注目が集まっているのがスイスの名門であるクレディ・スイスだ。強固な財務を誇るにもかかわらず、健全性への懸念が拡大して株価が大幅下落し、不穏な空気が漂う。日本の大手も買い手に名前が挙がる事業売却で凌ぎきれるだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

リーマンショックの前にパリバショック
クレディ・スイス「危機」の深刻度は?

 世界の投資銀行ビジネスが振るわない。今年7~9月期決算で、米ゴールドマン・サックスは最終利益が前年同期比43%減の30億ドル、モルガン・スタンレーは29%減の26億ドルだった。

 株式や社債の引き受け、M&A助言などを行う投資銀行部門のダメージがとりわけ大きく、ゴールドマンの同部門の収益は前年同期比57%減。モルスタは同55%減となった。

 年明け以降の米国の金利上昇や株価の下落など不安定なマーケット環境により、顧客企業が資金調達やM&Aなどに慎重になっているためだ。

 世界最大の資本市場を持つ米国を本拠地とする彼らは、まだ恵まれている。欧州系の投資銀行はさらに不利だとされる。中でも大きく動揺しているのがクレディ・スイスだ。デフォルト懸念が高まると上昇するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率(スプレッド)が他の欧州系に比べて大きく上昇している。

 2008年のリーマンショックの前年には仏BNP・パリバが傘下のミューチュアル・ファンド(投資家の請求によって随時解約可能なファンド)の解約を停止したことで投資家がパニックに陥る「パリバショック」が発生、いわゆるサブプライムローン問題の発端となった。

 クレディ・スイスは投資銀行部門の証券化ビジネス部門の売却観測が出ており、日本勢ではみずほフィナンシャルグループ(FG)が買い手候補に浮上している。

 スイスの名門銀行は解体され、次なる金融危機の端緒となってしまうのか?次ページから、この危機の本質に迫る。