幾多の大リストラを経て軌道に乗った野村ホールディングスの海外ビジネスだが、米系投資銀行には遠く及ばず、日系メガバンクにも肉薄される。非従来型のビジネス強化をうたうが、未知の領域で成功できるだろうか。特集『野村VSメガバンク 市場大乱の死闘』(全7回)の#6では、日本のメガバンクグループが内外で野村を猛追する模様を取り上げる。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
海外ではモルスタ提携の三菱が有利か
問われる「独立系」野村の存在意義
「銀行は、頭取が寝ている間もチャリン、チャリンと利息収入が入ってくる」――。証券会社の社員であれば、銀行への羨望とも反感とも取れるこうした言葉を口にしたことがある人もいるだろう。
同じ金融業界でも、融資に対する利息収入が安定して得られる銀行に対し、その都度、サービスや商品の提案をして案件を勝ち取り、フィーを稼ぎ出さなければならない証券会社。日々、収益確保に勝負を懸けるのが証券パーソンのプライドでもある。
もちろん、こうした認識は現在大きく変わっている。超低金利という環境下、銀行は本業の利息収入が伸び悩み、融資の提案やサービスの多角化、高度化を目指して模索が続く。
一方で証券会社は個人営業の分野で、顧客が長期的に保有する資産から滴り落ちる、安定したフィーの割合を増やそうとしている。
さらに、証券会社の個人営業に並ぶ事業の柱である法人営業、いわゆるホールセールの世界では、従来の銀行、証券の垣根を越えたビジネスモデルが追求されている。直接金融か間接金融かといった単純な議論では、正解が見いだせない状況だ。
野村ホールディングス(HD)は従来、国内の証券ビジネスで圧倒的なシェアを持ち、米国でも一定のポジションを築いた。一方でメガバンクグループは、傘下の銀行と証券会社の連携を強める。
中でも三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は米国の投資銀行の一角であるモルガン・スタンレーに出資。日本企業のクロスボーダー案件では野村HDをしのぐ有利さをアピールする。
みずほフィナンシャルグループ(FG)も米国で野村HDを上回る分野があり、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)はSMBC日興証券を傘下に入れて以降、個人と法人の両方のビジネスを強化してきた。
金融サービスの多様化が進む中、証券を軸として成長してきた野村HDを猛烈に追い上げるメガバンクグループの戦略と手法を次ページ以降で詳しく取り上げる。