みずほフィナンシャルグループが、楽天証券に2割の出資を決定。メガバンクグループによるインターネット証券の囲い込みが進むが、楽天証券は独自の対面サービスで大手との差別化を図ってきた経緯がある。営業姿勢がまるで異なるみずほ証券の関与で、こうした独自性の強いビジネスモデルまで失われてしまうのだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
メガバンク同士のせめぎ合い、だけではない
携帯事業が大赤字という親会社の事情
高齢の顧客が中心の対面証券が、インターネット証券に出資することで若年層の投資家を取り込む――。
みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ証券が、ネット証券で国内最大規模の楽天証券に2割を出資する方針を固めたと、10月5日に報じられた。
6月には、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が、楽天証券と規模を争うSBIホールディングス(HD)に1割の出資を発表。若年層の投資家を狙い、メガバンクグループによるネット証券の囲い込み競争という構図は確かにある。
だが、事態はそう単純ではない。ネット証券は手数料が割安なオンライントレードを顧客に提供しているだけでなく、実は対面でのコンサルティングビジネスにも注力してきた。
とりわけ楽天証券は、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)による運用相談のサービスを重視し、高コスト体質ゆえに収益確保に走りがちな対面証券の営業姿勢を批判して差別化を図ってきた経緯がある。
一方でみずほ証券はここ数年、世界株に投資するアクティブ型の投資信託を顧客に大規模に販売しており、金融庁が批判してきた「テーマ型」の投信販売ではないかとの懸念は、ネット証券だけでなく対面証券の関係者の間でも広がっていた。
2社の営業姿勢を比較すると、まさに水と油である。
楽天証券は10月3日に楽天証券ホールディングス(HD)を発足させて株式上場を目指しており、みずほ証券はこのHD傘下の楽天証券に出資する。ただしこの上場計画自体が、楽天本体の携帯電話事業の巨額損失を受けたキャッシュの確保が目的とみられている。
証券営業の悪習を批判し、独自のビジネスモデルを目指してきた楽天証券は、親会社の事情やメガバンクの思惑に翻弄(ほんろう)される運命をたどることとなった。