曇り空の東京写真はイメージです Photo:PIXTA

円安傾向が続いている。値動きが早すぎるのは問題だが、1ドル150円でも、貿易収支が赤字なら行き過ぎた円安とはいえないのではないだろうか。今日はその点を論じたい。(経済評論家 塚崎公義)

1ドル150円は本当に行き過ぎなのか?

 1ドル150円になり、32年ぶりの円安だと話題になっている。実際には、日本の方が米国等よりインフレ率が低いので、その分だけ円高になるはずだ、ということも考えると、「実質的には50年ぶり以上の円安だ」と考えるべきかもしれない。

 そこで、円安が行き過ぎているとか悪い円安だとかいう声が聞こえてくるが、本当に行き過ぎた悪い円安なのだろうか。

 そもそも正しい為替レートというものは存在するのだろうか。存在するとして、それはいかにして知ることができるのだろうか。「市場原理主義者」に言わせれば、市場で成立している為替レートが正しいのであって、行き過ぎるなどという言葉になじまない、ということかもしれない。

 そこまで言わなくても、筆者としては「貿易収支(正確にはサービス収支を含めた貿易・サービス収支。以下同様)を均衡させる為替レートが正しい」と考えている。正義だという意味ではなく、自然であり、長期的にはそこに収束する力が働くはずだ、といった程度の意味である。

 少なくとも、1ドル1円は正しくない、ということは貿易収支で説明できる。1ドル1円ならば、日本人がドルを買って米国で買い物をするから、貿易収支は超赤字になり、銀行にはドル買い注文が殺到してドルが瞬時に値上がりするはずだからである。同様に、1ドル1万円も正しくないのである。

 その意味では、現在の貿易収支が赤字である以上、ドル高円安が行き過ぎているとは言い得ないことになる。