第4回では、日本における予算制度や予算編成過程の問題を取り上げた。問題は明らかになった。次はこの問題にどう答えるかである。連載の最終回は、予算制度改革の具体策を提案し、どうすれば財政再建できるかを考える。
民主党政権の蹉跌:
画餅に終わった予算制度改革
民主党政権は、発足当時、高い理想を掲げていた。予算や財政の問題については、菅直人国家戦略担当大臣兼副首相の下で、「予算編成のあり方に関する検討会(以下、予算検討会)」を開催し、2009年10月には、論点整理を発表し、改革の方向を示している。さらに、2010年4月には、「中期的な財政運営に関する検討会・論点整理」も発表している。そこでは、複数年度を視野に入れたトップダウン型の予算編成、予算編成の抜本的な透明化・可視化、ベースラインや財政健全化目標などが盛り込まれている。これらの改革案は、先に紹介した諸外国の予算制度改革の流れに従うものであった。
実は、筆者は当時一橋大学に在籍し、この検討会のメンバーとして、予算制度改革を提案した。しかし、残念ながら、経済財政見通しの作成に当たり慎重な経済成長率を前提とすることなど、一部を除けば、この改革案は画餅に終わった。検討会のメンバーが特に強調したのは、ベースライン(予測)の作成、予測と実績の検証であった。現行制度と最新の経済データに基づき、3~5年程度の歳出・歳入の見積りをたてる。これがベースラインである。
次に、財政再建目標を達成するために、歳出・歳入をどうするのかを考える。半年毎にベースラインを改定し、財政政策の結果や目標の進捗状況を検証するのだ。提言を受けて、確かに、政府は、「中期財政フレーム」を発表した。一般会計の新規国債の発行額を44兆円以下、国債費以外の歳出上限額(シーリング)を71兆円以下にするなどというものである。しかし、これは、政策変更を盛り込んだ推計であり、ベースラインではない。
これは、やや技術的な問題と思われるかもしれないが、重要な点なので少し説明する。施策を変更してはならないと言っているのではなく、施策変更の効果を検証するためには、ベースラインとの比較が必要なのである。例えば、政策変更がない自然体の場合の来年度の歳出の見積りが75兆円なのか、69兆円なのかによって、シーリングの71兆円の意味は全く変わってくる。