前編では、主に法人税と経済成長の関係について述べた。一般論としては、法人税率の引き下げと課税ベースの拡大という組み合わせは望ましいが、内部留保を蓄えた日本企業の現状を考えると、税率引き下げはそれほどの効果は期待できないかもしれない。後編では、まず政府内での検討状況を紹介し、その問題点を指摘する。そして、経済成長と財政再建の二兎を追う英国の取組みを紹介し、財政再建のあり方について考える。

経済財政諮問会議等での検討

 法人税率の引き下げを巡って、政府の関係機関が年初より検討を進めている。安倍首相が国際会議で法人税改革の検討に着手すると述べたからである。関係機関の資料を概観しながら検討の方向や内容を検証する。

 法人税率の引き下げを強く主張しているのが経済財政諮問会議である。諮問会議は首相が議長を務めており、また4人の民間議員のうち半分は経済界出身であり、減税を求めるのは当然の動きである。2月20日の諮問会議に提出された民間議員資料では、①法人税改革はマクロ経済運営全体という大きな枠組みの中で考えるべきこと、②まずはデフレを脱却し、強い経済に向けた体質改善を合わせて行うことにより法人税収増を実現すべきこと、③こうしたアベノミクスの成果による増収の還元等によって、法人税率を25%に引き下げることが述べられている。

 順番どおりに素直に読むと、税収が増えてから法人税率の引き下げを行うようにみえる。そして、諸外国や日本の法人税収の動向を踏まえ、法人税率を引き下げた場合であっても、法人税収が増える可能性があると指摘している。

 諮問会議では、麻生財務大臣は、法人税減税は財政健全化の観点からの検討が必要であるとして、財源の確保の必要性を訴えているが(1月20日の諮問会議提出資料)、諮問会議の資料では、財源の確保についてほとんど触れられていない。財務省の推計では、法人実効税率1%の引き下げは約4700億円の減収をもたらす。4月4日の諮問会議の民間議員資料では、財政健全化に向けた更なる努力が必要と述べているものの、不思議にも、法人税減税に関する財源の問題については一言も触れられていない。