保険の国際機関IAISの当事者が「国際資本基準」作りの裏側を明かすPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

最近まで存在しなかった保険会社の国際資本基準

 資本は損失を吸収する機能があるため、金融機関のリスク管理上、重要な役割を果たす。想定外に債務が膨らんだり、資産が減少したりしても、資本がそれらに起因する損失をカバーする機能を果たすため、銀行でも保険会社でも最低限の資本を有することが規制上の要件とされている。

 銀行の国際資本基準制定主体であるバーゼル銀行監督委員会(BCBS)では、1988年に銀行の国際資本基準バーゼル1を確立し、その後の段階的な改定を通じて、現在バーゼル3まで進化させてきている。BCBSが確固たる地位を確立しているのは、銀行の国際資本基準を制定する役割を担っていることが大きい。

 銀行規制と同様、保険業界においてもほとんどの国で資本規制が導入されている。しかし、銀行とは異なり保険会社の国際資本基準はつい最近まで存在しなかった。保険監督者国際機構(IAIS)が1998年に正式に国際基準制定主体として活動を開始し、その春にIAIS事務局次長として私が赴任した時に、事務局長のクヌット・ホーフェルド氏が私に「IAISで何を実現したいか」と聞いてきた。「保険会社向けの国際資本基準を作りたい」と私は答えた。彼は「もちろんだ。機が熟したら」と言ってほほ笑んだ。

 確かに、当時は機が熟していなかった。まずは国際機関として組織を確立することが先決。国際資本基準作りに臨むに当たっても、議論の前提となる保険監督の原則(Insurance Core Principles)を作ることが最優先であった。