塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療剤「ゾコーバ」(一般名=エンシトレルビル)が11月下旬に緊急承認の可否をめぐって厚生労働省で再審議される見通しだ。当日の結果次第で、塩野義の命運は大きくわかれる。
「国産初の新型コロナ経口薬」「緊急承認制度の第1号」――。承認されれば、こういった称号が飛び交うだろう。しかし、本誌では塩野義の業績への影響を強調したい。塩野義は厚労省との100万人分の購入契約のほか、治験に協力した韓国やベトナムへの輸出も踏まえ、22年度の下期予想でゾコーバによる収益を「1100億円」と試算。事業全体の売上高が4000億円の大台にのせられるかどうか左右する重要な要素になっている。
再審議の当日は、第II/III相試験のデータが俎上に載る。同試験では「第IIb相パート」の主要評価項目である臨床症状の改善を達成できず、7月の厚労省の議論で継続審議となっていた。その2カ月後に塩野義が発表した「第III相パート」では良好な結果が得られ、承認取得の道筋が見えてきた段階にある。
とはいえ、第IIb相パートも第III相パートも、もとを辿れば同一の試験で、同じ化合物を評価し、患者の組み入れ基準もほぼ変わっていない。それにもかかわらず真逆の結果となったのは、ゾコーバに批判が殺到した審議会を経た塩野義の「反省」が生かされている。