和田秀樹が納得の「三浦瑠麗の言葉」、世の中は変わらないと思い込んでいないか写真はイメージです Photo:PIXTA

先日、ある有識者の討論会に出た際、国際政治学者の三浦瑠麗さんが、きわめて印象的な言葉を発しました。ウクライナ問題に日本はどう関わっていくかを話し合い、「アメリカとしっかり連携しよう」というところに結論が落ち着いて、各人が最後の総括をする場面で、三浦さんはこう発言したのです。
※本稿は、和田秀樹『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)の一部を抜粋・編集したものです

人は成長するもの、世の中は変わるもの

 前頭葉が働くのは、未経験のことや予想外のことと向き合うときです。前頭葉は、「変化に対応する脳」だからです。

 前頭葉がうまく機能していない日本人は、変化しないことを好みがちで、そもそも物事は「変化しないもの」だと思い込んでいる節があります。

 私が残念に思うのは、「人は成長するものである」という発想がないことです。62歳になる私を、いまだに「東大医学部卒とはすごいですね」と褒める方が多いことには驚かされます。40年前のことを褒められても、正直なところ複雑です。

 これではまるで、モテなくなった人が、昔モテていたことを褒められるようなもの。どうせなら「62歳なのに発想が斬新ですね」「年齢を重ねても勉強を続けてらっしゃるんですね」といった褒め方をしていただきたいところです。

 こうした日本人の「人は変化しない」「成長しない」という思い込みは根強いものです。人に対してのみならず、さまざまなことに対して同じ思い込みがあります。

 医師は日々、患者さんに対して「コレステロール値を下げましょう」「この薬を飲みましょう」などと言いますが、なぜそれを絶対の正解であるかのように言うのでしょうか。それは、学問が進歩しないものだと思っているからです。

 昔、マーガリンは体にいいと言われていました。今は体に悪いとされています。それと同じで、今は正しいとされている医学知識が、10年後には間違っているとされて、それが新常識となるかもしれません。医師たちはそんなこともまったく意識せず、今の学説を丸覚えして、患者に押しつけるのみです。

 実際、コレステロール値にしても、循環器内科の世界では動脈硬化を起こすので低いほうがいいとされていますが、精神医学の世界では、高いほうがうつ病の予防になるとされています。免疫学の世界でも免疫細胞の材料だと考えられています。

 さて、皆さんはどうでしょうか。「明日も今日と同じだろう」という前提で仕事をし、日常生活を送ってはいないでしょうか。