「がん検診でパニック」になる人の誤った考え方、不安で損する日本人写真はイメージです Photo:PIXTA

怒りよりもはるかに、日本人の判断を歪めているのは、不安の感情です。不安をコントロールできていれば「これもできる。こういうやり方もある」と複数の対策を考えられますが、パニックになっているときは、一つの答えしか出せません。がん検診の結果に翻弄(ほんろう)される人などはその好例です。
※本稿は、和田秀樹『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)の一部を抜粋・編集したものです

不安が日本人の判断を歪ませている

 大半の日本人がコントロールできていない感情は、怒りではありません。怒りよりもはるかに、日本人の判断を歪めているのは、不安の感情です。

 たとえば、「集団からはじかれるかもしれない」という不安から、言いたいことを言わず、そのうち自分がどういう価値観を持っているのかさえ見失っていく人たちがいます。

 上司ににらまれたら怖いからどんな指示にも従う、という人もいます。世間からの糾弾を恐れて後ろ暗い事実を隠蔽(いんぺい)する、証拠となる書類をシュレッダーにかけるなどの犯罪行為に走ることもあります。

 それが明るみに出れば、その人の将来は閉ざされてしまいます。過剰な不安は、怒りに任せた暴言以上に、社会的生命が絶たれるレベルの深刻な結果を引き起こします。そして日本では、怒りのせいで破滅する人より、不安のせいで破滅する人のほうが多いのです。

 不安によって、犯罪被害者になることもあります。その典型例が「振り込め詐欺」です。加害者たちは、ターゲットを不安にさせることで、金銭を巻き上げます。日本人の心理や行動の特性を利用した犯罪手法と言えるでしょう。

 また、不安に飲まれると、変化に対して過剰に臆病になります。多くの国民が自民党に票を入れ続けるのも、「変わることが怖い」という心理が少なからず働いていると思われます。「このまま一党独裁体制的な国になっていくほうが怖いのでは」という「常識」が通用しなくなっているのも、不安が大きすぎてまっとうな判断ができなくなったからでしょう。