「フレーム&ワークモジュール」の7つのステップ

“暗黙知の形式知化”を誰もが行えるようにした「フレーム&ワークモジュール」メソドロジー――その誕生のきっかけは、「知識ばかりを教えても、人が育たない」という田原さんの原体験だという。

田原 私のキャリアのスタートは、外資系の人材派遣会社でした。そこで、企業に派遣するスタッフを短期間でプロフェッショナルに育てる「教育トレーナー」の仕事を担っていました。外資系では、非常にシステマティック(科学的)に、短期間で人材を育てあげます。しかし、その後、日本企業で研修講師を経験した際、「知識教育」が中心で、実際に仕事の現場に出ると、知識がうまく活用できず、力が発揮できていないことに気づきました。知識を教えただけでは、人は育たない――では、どうすればよいか? 業務の全体像と最適化された業務手順を中心に、もっとシステマティックに仕事を教えることが重要です。また、業務の細部に宿るベテラン社員の暗黙知を“見える化”して教えることが必要だと気づきました。

「フレーム&ワークモジュール」メソドロジーでは、ひとつひとつの業務を「モジュール」といい、業務のかたまりを細分化し、小さい単位に区切っていくことを「モジュール化」と呼んでいる。

田原 業務を分解し、区切っていく方法に特別なルールはありません。内容によって、大・中・小のモジュールに分ける程度です。モジュール化においては、付箋を使いますが、最近では、無料で使える、付箋風のアプリもいくつかあります。

「フレーム&ワークモジュール」メソドロジーでは、“仕事の見える化”を、“業務を再現するモデル”としてイメージしながら行います。 “仕事の見える化”は、考え方や手順がわかる簡単なメモや図から始めて構いません。各自が「暗黙の了解」で行っている仕事を、目に見える“モデル”として見える化することで、組織で、業務の具体的なイメージを共有化できます。目に見える“モデル”がなければ、各自がバラバラで属人的な仕事のやり方を勝手にイメージしてしまったまま、話がすれ違ってしまうのです。このように、いわば組織の“共有モデル”を作ります。

 業務のかたまりをブロックと捉え、それを分解していくことが「モジュール化」だ。そして、大小さまざまなひとつひとつのブロック(=モジュール)の形(=業務内容)を付箋に記していく。たとえば、人事部門の「採用」の仕事なら、「採用計画」「募集広告」「採用面接」といったことだ。

 そして、「フレーム&ワークモジュール」メソドロジーでは、モジュール化を起点に、業務の全体像と流れと細部を知るために、“3つの図”をつくっていくという。

田原 3つの図は、それぞれが、全体・流れ・細部を表したもので、業務の見える化を実現します。全体を見える化した「モジュール一覧表」、流れを見える化した「フロー図」、細部を見える化した「KWリスト(Knowledge&Workリスト)」です。そして、この3つの図それぞれに、暗黙知が宿っているのです。

 特に、若手社員に教えるときは、まず、「業務の全体像」を明らかにし、「業務の流れや、業務間のつながり」を教え、そして、いま自身が「どの部分(モジュール)の仕事をしているか」を示すことで理解が深まる、と田原さんは解説する。

田原 社内のどういう業務にどのような意味があって、なぜ取り組んでいるのかを知ることが大切です。昨今の新入社員は、業務の全体像や目的・意義を理解したい傾向が強いので、「モジュール一覧表」で業務の位置づけを教え、「フロー図」で業務の流れを、「KWリスト」で細かな手順を伝えていきます。