「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
低体温の高齢者は
認知症に陥りやすい
【前回】からの続き コロナ禍で、以前より「体温」への関心度が高まりました。体温が37度以上になると、ウイルス感染による発熱と解釈される場面が多くなったからです。実際のところ、平熱は人それぞれで、なかには37度近い人もいます。1日のうちでも1度前後の変動があり、もっとも体温が低いのは午前4時前後、そして夕方になるといちばん高くなります。
また、平均体温は加齢とともに下がります。赤ちゃんの平熱は36.5~37.5度。そこから年齢とともに少しずつ下がるのです。一般的に平熱が36度を下回るようになると、「低体温」とされます。高齢者には低体温の人が少なくなく、低体温の高齢者は認知症に陥りやすいといわれています。
また、動物実験では外気温が低いほど、アルツハイマー型認知症は悪化することが確かめられています。なぜ外気温が低かったり低体温だったりすると認知症のリスクが高まり、発症した認知症が悪化するのか。確かなことが解明されているわけではありません。
低体温による免疫力低下を防ぐ
しかし、これには「免疫機能」が関わっていると私は考えています。そもそも免疫とは、一度かかった病に、二度とかからないしくみのことです。体外から侵入したウイルスや、体内で生じたがん細胞などの異物をいち早く見つけ出し、排除するしくみを指しています。
この大事な免疫機能は、体温が36.5~37.0度の範囲内で最大限働くように設計されています。免疫の主役を担っている白血球の働きは、体温が1度下がると、約30%ダウンするといわれているのです。
ここで焦点になるのは、「免疫力が低下すると、認知症になるのか?」という疑問です。この疑問に明確に答えるだけの証拠は、まだそろっていませんが、加齢で白血球などの免疫細胞に慢性的な炎症が起こると、脳で認知機能の低下が起こることがわかっています。ですから、免疫の低下を招く低体温は、避けるにこしたことはないのです。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)