長引くコロナ禍で、外出して体を動かす機会がメッキリ減ってしまった人は多いはず。日ごろの活動量は減ったのに、なぜか食欲は減らない。キンキンに冷えたビールも、どんどん美味しくなる季節だ。
飲食での摂取カロリーは多いのに、体を動かしての消費カロリーが減ってしまったのでは、太ってしまうのは当たり前かもしれない。そうこうするうちに内臓脂肪が蓄えられて、お腹がポッコリとせり出し、以前はすんなり入っていたズボンがパツンパツンになってしまったなんてことも。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも体が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、生活習慣病のもとにもなる内臓脂肪を根本から解説して問題解決する王道の手法を紹介する。
(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)
「内臓脂肪型肥満」は単に太っている状態ではない
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。
太っている人が有酸素運動で体重を減らすと、単に体形がスリムに絞れるだけでなく、生活習慣病の予防にもつながります。それは、生活習慣病の前段階といえる「メタボリックシンドローム」(メタボ)のリスクを減らせるからです。
メタボとは、お腹に体脂肪がたまりすぎる「内臓脂肪型肥満」がもとにあり、それに「高血圧」「高血糖」「脂質異常症」が重なったものです。単に腹が出っ張って、太っている状態ではないのです。
内臓脂肪型肥満に潜む「心臓病」「脳卒中」のリスク
ヘソの高さで測るお腹まわり(ウエスト)が「男性85cm以上」「女性90cm以上」だと、内臓脂肪型肥満と判定されます。
さらに「血圧」「空腹時血糖値」「中性脂肪」「HDL(善玉)コレステロール」の値から、高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つ以上を併発していると判定されると、医師によってメタボと診断されます。
メタボは、「動脈硬化」、すなわち血液を体の隅々まで運ぶ動脈が狭く硬くなり、血管の内腔にプラーク(血液中のコレステロールや脂肪からできた粥状の物質)がついたり、血栓(血管の内腔で血液が固まって塊になった状態)が生じたりして、血管が詰まりやすくなる状態の“予備群”でもあります。
メタボ予防が盛んに叫ばれているのは、単に肥満予防のためなのではなく、動脈硬化が日本人の死因の2位と3位を占める「心臓病」と「脳卒中」の背景にあるからです。心臓をとり囲む「冠動脈」が詰まると、狭心症や心筋梗塞といった「虚血性心疾患」に、脳動脈や脳に血液を送る頸動脈が詰まると「脳梗塞」になります。
ポッコリしたお腹の正体とは?
メタボ予防・解消の第一歩は、「内臓脂肪」を減らすことです。
内臓脂肪とは、「消化管」(口からのど、食道、胃、小腸、大腸をへて肛門に終わる管のこと)などに付着している体脂肪であり、“ポッコリお腹”の正体でもあります。たまりすぎた内臓脂肪からは、血圧や血糖値を上げたり、血液の塊を生じやすくしたりする物質が分泌されますから軽視できません。
体脂肪には、内臓脂肪とともに、皮膚の下に広がる「皮下脂肪」もあります。日本人は体質的に皮下脂肪をためるのが苦手なため、内臓脂肪をためやすいといわれています。
有酸素運動で減りやすい内臓脂肪
皮下脂肪と比べると内臓脂肪は有酸素運動で減りやすいという、うれしい特徴があります。有酸素運動をすると「アドレナリン」というホルモンが分泌されて、体脂肪の分解を促してくれます。
内臓脂肪はアドレナリンが効きやすい(専門的には「感受性が高い」と表現します)ので分解されやすいため、有酸素運動で消費されて減りやすいのです。
※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、他にも体が若返る方法がたくさん掲載されています。