「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が教える】認知症のリスクを高めてしまう…年齢を重ねるほど絶対に避けなければならないことPhoto: Adobe Stock

孤立しないことが大事

ヒトという動物は、もともと「群れ」で暮らす“群がり動物”です。考えてみると、ヒトは動物としてはか弱いです。逃げ足だって速くないですし、相手を突き刺す鋭い角(つの)も、牙(きば)も持ち合わせていません。武器なしで戦ったら、ライオンや熊はもちろん、イノシシにだって負けるでしょう。

そんなか弱い動物が、地上にこれだけのさばっていられるのは、「群れ」で社会を形成し、何事も協力し合っているおかげです。「群れ」で交流するため、言葉が生まれました。「脳が言葉をつくり、言葉が脳を変える」といわれますが、言葉でコミュニケーションを交わすうちに、脳が刺激され、活性化され、これだけ多彩な文明・文化をつくり出してきたともいえます。

だからこそ、ヒトが「群れ」から切り離されて孤独になり、言葉を交わす相手を失うと、脳に対する刺激が低下してしまいます。それは間違いなく認知機能の低下につながり、認知症の可能性が高まります。使わないと衰えるのは筋肉ばかりではなく、脳も同じなのです。

「孤立」も「孤独」も認知症の進行を早める

「孤独」とは別に「孤立」という言葉がありますが、これは似ているようで異なる意味合いがあります。孤独は、頼れる人や心が通じる相手がおらず、寂しいと思う「気持ち」。一方の孤立は、他人とつながる手段のない「状況」を表します。どちらも、できるだけ避けたほうがよいでしょうけれども、どちらかというと孤立のほうが深刻です。

孤立すると、食事など、生活もおろそかになりがちで、天寿を全うするまで健康な心身を維持することは難しくなるでしょう。栄養状態や生活環境が悪化しているのに、それを改善しようという意欲を失い、周囲に助けを求めない「セルフ・ネグレクト」(自己放任)に陥るケースも少なくありません。

時おり話題になるゴミ屋敷や孤立死の背景には、セルフ・ネグレクトがある場合もあります。孤立すると早々に認知症になるか、健康を害して短命になり孤立死するかの確率が高まりかねません。さらに孤立も孤独も、認知症の進行を早めてしまいます

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。