ドイツのショルツ政権発足から間もなく1年がたつが、その対中戦略が注目されている。中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害、ゼロコロナ政策やサプライチェーンなど諸問題がありながらも、ドイツと中国の経済界は前メルケル政権にも劣らない密接な結び付きを示しているためだ。中国市場にのめり込むドイツの対中ビジネスを追った。(ジャーナリスト 姫田小夏)
ハンブルク港運営会社の株式を中国資本が取得
ドイツ連邦政府は10月26日、ハンブルク港の株式の一部を中国資本が取得することを認めた。同港の運営はHHLA(ハンブルク・ハーフェン・ウント・ロジスティク)によるが、その子会社CTT(コンテナターミナル・トレロー)の株式の24.9%をCOSCO(中国遠洋海運集団)が買収したのだ。
ハンブルク港とは、ドイツ最大の港湾で、2020年のコンテナ貨物量は854万TEU(*)と世界18位にある(日本港湾協会)。中欧貿易においても最大の港で、中国の貨物にとっては欧州の玄関口に位置付けられている。北京紙「新京報」の取材に応じた同港マーケティング協会のCEOアクセル・マターン氏によれば、「ハンブルク港のコンテナの3つに1つが中国発または中国向けだ」という。
*長さ20フィートのコンテナ1本を1TEU(Twenty-foot Equivalent Unit)としてカウント
独中の商船往来は今に始まったことでなく、歴史は長い。中国国営通信社「新華社」によれば、1731年には、茶、絹、磁器を積んだ広州の商船がハンブルク港に入港していたという。それから約300年を経た今、ユーラシア大陸を横断する国際貨物列車「中欧班列」の陸上輸送も加わり、同港は「一帯一路」の合流拠点として、中国経済との一体化を強めている。
ドイツメディアの「ドイチェヴェレ(以下、DW)」は、中国資本の株式取得について「内閣と与党連合の反対があった」ことを報じ、それを承認したショルツ首相の独走を批判した。また、英BBCは「ショルツ首相は中国とのデカップリングに賛成ではなく、リスク分散を重視している」とするドイツ政府のスポークスマンの言葉を伝えた。
ドイツと中国は、静かに着々と関係を深めているのだ。