新型コロナの水際対策が緩和され、日本では急速に外国人の個人観光客が戻ってきているが、ゼロコロナ政策などの影響で中国人観光客は増加していない。だが、中国人富裕層のマーケティングや、日本企業、地方自治体に対中コンサルティングを行う在日中国系企業、行楽ジャパン社長の袁静(えん・せい)氏によると「11月上旬に政府が隔離期間の短縮を発表したこともあり、特に富裕層の旅行熱は高まっている」と言う。折しも10月中旬、高所得者しか取得できないといわれる日本行き5年マルチビザの新規発給が解禁になった。同社が行った緊急アンケートの結果を見ると、中国人富裕層が日本旅行に何を求めているのかが、浮かび上がってくる。(ジャーナリスト 中島 恵)
コロナ以前は、毎週末のように
日本を訪れる中国人富裕層が多くいた
行楽ジャパンが行った緊急アンケートは、上海市など大都市に住む5年マルチビザホルダーを対象にネットで行われ、206人から回答を得たもの。中国人富裕層の定義は明確にはなっていないが、日本の観光庁によると、1回の旅行で着地消費額が1人100万円以上の高付加価値旅行者がそれに当たる。袁氏も「日本円で年収1000万円以上が『やや富裕層』。もちろん、数億円以上の年収がある富裕層も非常に増えています」と話す。
そうした富裕層(やや富裕層を含む)を対象とした同調査の結果のQ1~Q3を見ると、「性別」は女性が61%と多く、30~39歳が半数以上。「職業」は「会社経営者」が約47%で最も多く、次いで「企業の幹部」が約28%となっている。中国の富裕層は日本人富裕層と比較して年齢が若いのが特徴で、30~40代が多い。中国全体では「富二代」(富裕層の2代目)も増えており、20代の富裕層も少なくない。
Q4「コロナ後に日本に行くとしたら、何日間旅行したいですか?」の問いには、「4~7日間」が最も多く、約52%と過半数に達した。続いて「7~10日間」が約28%、「10日以上」が約18%で、少なくとも4日以上の旅行を希望する人が99%となった。上海から東京は空路で3時間程度しかかからないため、コロナ以前には週末に2泊3日の弾丸スケジュールで、毎週のように日本旅行を楽しむ人も少なくなかったが、袁氏は「隔離期間が短縮されたといっても、5+3(5日間の宿泊施設での集中隔離+3日間の自宅などでの健康観察)で計8日間あるため、せめて1週間くらいは旅行したいという気持ちの表れではないでしょうか」と分析する。