多くの日本企業がグローバル競争への参画を余儀なくされている。昨今の円高や低金利も追い風になり日本企業によるクロスボーダーM&Aは増加の一途をたどっている。しかし、言語や文化の違いから、同時に障壁も多いのも事実。クロスボーダーM&Aをいかに成功に導くか、その要諦を明かす。

なぜ今、クロスボーダーM&Aなのか

「なぜ、日本企業にとってクロスボーダーM&Aが必要なのか?」

 その答えは、一言でいえば「グローバルな市場競争に勝ち抜くため」といえるだろう。日本企業にとってのマザーマーケットである日本市場は縮小を続けており、日本企業がこれまでのような成長を続けるには、グローバル市場への参画を余儀なくされている。

 また、グローバルな市場競争への参画を自ら積極的に望んでいなくとも、欧米のグローバル企業や新興国の成長企業は勢いを増すばかりである。もはや「どこの国の企業」という概念はなくなり、海外企業と国境を越えて競い合わざるを得ない状況に多くの日本企業は直面しているのだ。

 今やどの業界においても、すでに10年、20年というスパンでグローバル展開を積極的に進めてきている「グローバル企業」が競争相手として存在しており、彼らはM&Aを日常のものとして活用して、さらなる規模拡大、収益改善を実現している。

 激しいグローバル競争の中で、一定のシェア、売上、利益を確保し、業界内で輝き続ける企業であるためには、自社の持つグローバルで通用する強み、すなわち得意とする「コアビジネス」の徹底した強化を目指すことが必須だ。そして、その強みとなるコアビジネスをグローバルで素早く展開していくことが、多くの日本企業に求められている。

 クロスボーダーM&Aは、こうした「コアビジネスの強化」を短期間で実現するとともに、「自社のグローバル化」という変革をもたらす力を秘める戦略的な手段である。実際、グローバルで高い競争力を有する多くの企業は、成長を実現する最も重要な手段としてM&Aを捉え、実行に移している。