すぐれたM&A戦略は、点から線・面へつながる

 では、欧米、新興国においてグローバル展開を成功させている企業は、如何にM&Aを活用しているのだろうか。そして、それをベンチマークとして戦略立案から買収成立までの成功のポイントを引き出せないだろうか。

 M&Aを活用して成長しているグローバル企業に見られる特徴は「M&Aの日常化」による「成長への好循環モデル」の構築である。一方、多くの日本企業は、M&Aを非日常の特殊な戦略実現手段と位置付けている。

 しかし、自社にとって望ましいM&Aを実現するためには、日常の事業運営の中で買収や売却を常に意識しながら行動することが必要となる。そして、買収や売却を単発で終わらせずに、自社の成長ステージに合わせて複数回にわたって実行することで、自力での努力では難しい成長を実現することが可能となる。

 単発のM&Aを「点」とするのであれば、複数の案件実行により「線・面」へと機能や地域の事業領域を広げていくことが望ましいのである。

 このように複数のM&Aを実行して成長するために大切なのはディール実行の軸となる「M&Aの前提となる戦略」の明確化である。自社がグローバルで戦うためのコアビジネスと成長目標を明確に定義し、それを実現するために如何にM&Aを活用するべきであるか、つまり、成長に向けたM&A実行のストーリーを決めることが望ましいといえよう。

 このような明確に定義されたM&A戦略を活用して、自ら買収候補先を積極的に探索して、買収提案を実施すると共に、コアビジネスの成長に寄与しないビジネスの積極的な売却も検討することが望ましいと考える。

 また、ディール中も当初思い描いた戦略を常に念頭に置きながら推進するべきである。ディールの雰囲気に飲まれて意思決定が歪むことがないように、「そもそもの目的」を意識したディール推進を志向するべきであろう。