「私はあれが欲しい!」と親に伝えた時、「ダメ。こっちにしなさい」「えー? こっちのほうがいいわよ」と親の意見を一方的に押し付けられることがあります。子どもにとって親は絶対ですし、自分で買うお金もありませんから従うしかありません。

「あれが欲しい!」と思っても、「高いからダメだろうなぁ」「お母さんは、こっちがいいって言いそうだなぁ」と親の様子を察し、伝えることさえ我慢してきた人もいるかもしれませんね。

「私はこれがしたい!」と気持ちを伝えた時に、「あなたには無理」「そんなんじゃやっていけない」と全否定されることもあります。「あなたのためを思って」と言われてしまうと、強く言い返すこともできません。

 親に自分の気持ちを伝えるまでもなく「どうせ言っても無理だろうなぁ」と考えたり、「親が困るだろうなぁ」と親を気遣い、あきらめたりすることもあるでしょう。

「それはダメ」「やめなさい」と直接、言葉で言われなくても、子どもは親の様子や態度から察します。

 親が深くため息をついたり、眉間にしわを寄せたりする様子を見れば、親が賛成していないことが分かってしまいます。
「あなたはいい子だからそんなことしないよね?」と言われるのは「するな」と言われているのと同じですし、「あなたにはこっちがいいと思う」と強く言われるのは「こっちにしなさい」と言われているのと同じ影響を及ぼします。

 親に認めてほしいと思っていたり、親を想う優しい気持ちを持っていたりする子ほど、「親が何を求めているのか」を敏感に察知するようになるのです。

 子どもの頃、自分より親を優先してきた人ほど、大人になった時「自分より他人優先」になります。
「親を優先してきたことが良くなかった」ということではありません。
 誰かを優先できるのは、あなたの優しさ、あなたのいいところでもあります。

 ここでお伝えしたいのは、親の言葉や態度が「子どもにどれほど影響を与えるのか」ということ。
 そしてその影響が、大人になった今も続いているかもしれないという事実です。

 長年カウンセラーとして従事しているからこそ言えるのは、「あなたが思っている以上に、親の言葉や態度は大人になったあなたに影響を及ぼし続けている」ということです。

その価値観は「誰」のもの?

 あなたは子どもの頃、何が好きでしたか? 何になりたかったですか? どんな遊びが楽しかったですか?
 大人になった今、あなたの好きなものは何ですか? 何をしている時が楽しいですか?
 10年後、あなたは何をしていたいですか?

「親は○○を嫌がったな」「親はこうなってほしいだろうなぁ」など、これらの答えを考えた時に少なからず親のことがよぎるなら、「親の価値観』が今のあなたに影響を与えている可能性があります。

 親の価値観で生きていると、「生きづらさ」を感じます。
 事実、生きづらさを感じる人のほとんどが、親の価値観を「自分の価値観」と無意識に思い込んでしまっています。

 あなたの好きな「ファッション(洋服)」をイメージしてみてください。
 それとは反対に、「これは絶対着たくないな……」と思う洋服をイメージしてみてください。
 次に、絶対着たくない洋服を着て、街中を歩く様子をイメージしてみてください。

 ……どうでしょうか?
 なんだか落ち着かないですよね。今すぐその場から逃げ出したいと思ったり、なんとも言えない居心地の悪さを感じたりするのではないでしょうか。

 親の価値観で生きることは、これと同じような違和感のある生き方になります。
 親の好きな服と自分の好きな服が「似たようなテイスト(似たような価値観)」なら困らないのですが、生きづらさを感じる人は『親とは全然違う価値観』を持っていることが多いです。

 たとえるなら「親の好きなファッションを自分の好きなファッションだと本気で思い込んで、絶対着たくない服を着て街中を歩いている」ような状態です。

「絶対着たくない服を着て歩いている」事実に気がついていないので、なぜこんなに居心地が悪いのか自分でも理解できません。
 これが「なぜか生きづらい」という感覚につながります。

 あなたがどれだけ頑張ってもうまくいかなかったり、なんだか生きづらいと感じていたりするのなら、それは「自分らしくない生き方」をしているせいかもしれません。

 過去の思い込みを捨てて、親の価値観から「自分の価値観」へ変化させてみませんか?
 毎日がもっと軽く、楽しく感じられるはずですよ。