他人を信じるのが難しいとき「10秒」でやるべきこと

他人と物理的・心理的な距離が広がり、「1億総孤独」といえる現代。他者に依存せず、「個」として自立するには、どうすればいいのでしょうか。寺田倉庫の経営改革などを果たし、NHK「SWITCHインタビュー達人達」でコシノジュンコ氏と対談、著書『ぜんぶ、すてれば』は4万部を超えるベストセラーとなった「77歳・伝説の経営者」、中野善壽氏は、「孤独を生きることで、自分の感性を信じ、磨き抜くことができる」と語ります。中野氏は孤児同然の幼少期を過ごし、孤独のなかを生きてきました。しかし、そこで自分の感性を磨き、「個」として自立していきます。社会に出てからは「孤独を武器」に、伊勢丹・鈴屋での新規事業展開や、台湾企業の経営者として数々の実績をあげてきたのです。本連載では、中野氏の新刊『孤独からはじめよう』に掲載されている「他人に依存せず、自立して、素の自分をさらけ出して生きる」51の人生哲学から抜粋。「一人で生きるのが当たり前の時代」に肩肘を貼らず、自分に期待し、颯爽と人生を楽しむ考え方を紹介します。

会って10秒で信じる

自分の「個」を開けば、相手も「個」を開いてくれる。

僕にはそんな実感があります。

殻に閉じこもるのではなく、自分をオープンにさらけ出す。

素直な言葉で、相手に語りかける。

初めて会った相手でも、目を合わせて、一言二言会話をすれば、なんとなくの肌感覚で信用していい人かどうかはわかるでしょう。

会って10秒で信じる。

それがスタートです。

自分が信じなければ、相手も信じてくれない。

ビジネスだって、目の前の人を信じることから始まるもの。

逆にいうと、いつまで経ってもビジネスを進められない人は、目の前の他人を信じることができない人なのではないでしょうか。

もしうまくいかなくても、次を探せばいい。

チャンスは必ずくる。自分を信じましょう。

目の前の他人を信じることができれば、そこに対話が生まれます。

対話ができれば、一人では決して成し遂げられない大きなチャレンジも可能になります。

天王洲や熱海でエリア活性化に着手しようという時、僕は必ず「対話」から始めてきました。

そこに長く暮らす人たちと顔を合わせて、いろんなことを質問して、話を聞くのです。

縁あって、ホテルニューアカオの経営に参加することになってから、隔週でずっと続けているのが、「熱海の市民と語る会」。

毎回違う30人ほどのメンバーで、商工会やマンションの自治会の方々、神社の宮司さんといった地元の住民の皆さんと、対話を重ねる時間です。

一方的な話をして、形ばかりの意見交換をするのではなくて、これからの街の姿はどうあればいいのかという理想を共に描き、問題意識を分かち合っているのです。