「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。

出世レースに負けると、給料はどれくらい変わるのか?【トヨタの賃金分布で見る】Photo: Adobe Stock

トヨタの同期入社では、
どんなふうに差がついていくのか?

 通常、賃金上昇カーブといえば、同年代社員の平均的な賃金の伸びを示しているが、実際には、全員が同じカーブを描くわけではない。給料の「分布」についても考える必要がある。これは、「同期」間の格差が、どのくらいの幅でつくのかというバラツキ具合、中央値としては(つまり平均的な出世なら)どの水準まで伸び、どこにハードル(出世の壁)があるのか、である。

 日本企業では、社内での同期の間の小さな差が、実に重要視されている。それは、その時点では小さくても、マラソンと同じで、「先頭集団=トップ昇進集団」にいることが、将来の役員待遇以上への出世レースに影響するからだ。

 国内最大、世界でも10位前後の売上高を誇る日本一の会社、トヨタ自動車を代表例として説明しよう。

 トヨタの総合職は、入社9年目までは差がつかない。10年目に「上級専門職」(組合員のいちばん上のランク)に昇進するのが「一選」で、年収は額面800万円ほどに。11年目が「二選」。この段階では大半の社員が1年遅れの二選までに昇格するが、漏れて脱落する社員もわずかにいる。30代は毎年、ベース賃金が上がって行き、残業代次第で1000万円に到達する。

 その次の選抜は30代後半に訪れる。16年目に管理職クラスの「基幹職」に昇格するのが「一選」で、約1300万円となる。翌年が「二選」。3年遅れがラストチャンスで、逃すと、管理職になれないまま塩漬けとなる。稀に、それらを上回る「15年目」もいる。

出世レースに負けると、給料はどれくらい変わるのか?【トヨタの賃金分布で見る】