【最新の認知症治療を実践する脳のカリスマが30年超の長寿研究から導いた幸せな生き方】
2010年代には大ベストセラー『100歳までボケない101の方法 脳とこころのアンチエイジング』で100歳ブームを巻き起こした医学博士・白澤卓二医師渾身の自信作『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』が完成。
人間の限界寿命とされる120歳まで生きる方法を提示します。
現在の脳のパフォーマンスを上げて、将来寝たきりや認知症にならずに長寿を目指す方法論が満載です。

人間が120歳まで生きられる説は本当か?Photo: Adobe Stock

120歳は、人類の限界寿命として学会で議論中

 今から20年ほど前、20世紀の終わりごろに、100歳まで元気でいる人に注目が集まったことがありました。当時は「100歳まで自分の足で歩き、自分の口でものを食べ、認知機能も衰えていないなんてすごい!」とかなりもてはやされましたが、最近では100歳まで生きるのは特別なことではないと感じる方も多いのではないでしょうか。みなさんの身近にも80代90代で元気な方がいらっしゃると思います。100歳までとはいかなくても、90歳まで生きるのは普通というのが常識になりつつあります。

 長らく長寿研究をしてきた私からすると、人体の細胞内の染色体にあるテロメアの最長寿命が120年だからという理由だけにフォーカスして「人は120年生きられる」と断言してしまうのは乱暴に感じますが、最近ではテロメアを温存すれば120歳まで生きられるという主張もまことしやかに唱えられています。

 実際のところ、世界のギネス史上最高齢者は、122歳のジャンヌ・ルイーズ・カルマンさんという女性です。彼女の年齢については、高齢になったカルマンさんが途中で娘と入れ替わって私財を守ったという疑惑もあるのですが……。

 カルマンさんを除外しても、2022年4月に亡くなられた日本人の田中カ子(たなか・かね)さんは享年119歳。入退院をくり返したものの寝たきりではなかったそうです。2005年に115歳で亡くなったオランダ人女性のヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーさんは、死後に脳の神経細胞が観察され、老年性の病理学的変化がほとんど見られなかったと報告されています。

脳の認知機能がしっかりしていることが前提

 120歳まで健康に生きるということは少なくとも脳の認知機能がしっかりとしていて、普通に食事ができて、自分の足で動き回れることが前提になると思います。田中カ子さんや、ヘンドリック・ヴァン・シッパーさん、あるいはギネスに登録されていなくても116~118歳で元気な方はちらほらいらっしゃいます。そこを超えて120歳まで生きるというのは、人類の最大寿命として学会でも議論されているところです。たった数年の差ですが、人の限界寿命については議論がまとまっていないのが現状です。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)

監修 お茶の水健康長寿クリニック院長・医学博士・医師 白澤卓二
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。現在、お茶の水健康長寿クリニック院長。