昨年と違って気になる点は、

「今年は値上げラッシュで、あまり商品を安く感じない」
「電気代の値上がりなど家計が厳しい中だから、そんなに浮かれてお金を使うわけにもいかない」

 といった声が多く聞かれることです。

 その「高い」という要素の分だけ年末商戦の熱量が下がるのは織り込み済みとして、それ以外の要因として「コロナ禍の自粛からのリベンジ消費のエネルギーがそのマイナス分を押し上げるのではないか」という期待も高まっています。そのあたりはどうなるのか?

 これを考えるにあたって経済評論家として指摘したいのは、そこには他にもまだ計算外になっているリスク要因が存在するということです。順を追って説明しましょう。

年末商戦の裏には「物価高以外」の
三大リスクがある

 ここで一般的な報道ではプラス材料と捉えられている項目で、私から見るとリスク要因に見える情報を提示させてください。

 百貨店大手の三越伊勢丹では、伊勢丹新宿本店の今年の上半期売上高が2019年を上回る過去最高になりました。会社全体でも、22年度は免税を除く売上高で18年度の売上高を上回りそうです。つまり、インバウンド需要を除く国内需要で百貨店が需要回復を見せているというニュースです。

 そこまではいいのですが、商品構成の内訳をみると全体が増えているわけではありません。大幅に増えているのはラグジュアリーと宝飾・時計の2カテゴリーで、19年度は全体の約30%だったものが約40%へと増加しています。一方で婦人服・雑貨、化粧品、食品などの売り上げは、構成比では目に見えて減少しているのです。

 国内需要の富裕層によるラグジュアリーや宝飾・時計需要がリベンジ消費の成果を出しているのはプラスである一方、婦人服・雑貨、化粧品、食品にそこまでの勢いがない。これはリスクの兆候ではないでしょうか。

 そこでなぜこのような兆候が見られるのか、これから問題になりそうな三つのリスク要因を挙げてみたいと思います。

コロナ禍の生活変化で
消費者の「嗜好」が変化している

 最初の要因は、私たちが「何をリベンジするのか、3年前の生活を忘れつつある」という点です。

 コロナが始まった最初の年、20年の冬は確かに私も引きこもり生活にフラストレーションがたまって、外出したら思いっきり買い物をしたいという気持ちにあふれていました。21年の冬はワクチン接種が始まったこともあり、リベンジしたい気持ちがより高まりましたが、コロナが拡大するたびにその気持ちが不完全燃焼したのを記憶しています。

 それで迎えた今年、22年ですが、これまで以上に外出できるようになったはずなのに、なぜか気持ちが高ぶらないのです。

 理由は、コロナ禍の新しい生活様式でライフスタイルがすっかり変わってしまったからです。よそ行きのジャケットは、毎日着替えるものからZOOM会議のときだけ羽織るものに変わりました。カメラの解像度を考えたら2着を着まわせば十分です。

 旅行に出かける頻度は増えた気がしますが、クルマをドライブして近場に行くほうが安心ですし、人混みは避ける習性が生まれたため、行く先は結構変わった気がします。イベントもリモートで参加するのに慣れてきて、リアルな人出にはつながらない生活が定着してきました。

 2年前は確かに何かを買うことを諦めて何かにフラストレーションを感じていたのですが、今になると何を諦めていたのか、とんと思い出せないのです。それを買わなくてもよいような気がするのです。