欧州のロシアとのエネルギー戦争で、LNG(液化天然ガス)のガス化設備を備えた船が極めて重要となっている。電力を賄うのにそれに依存する他の地域にとっては不運といえる。ロシアが今夏に欧州へのガスパイプラインを遮断してから、欧州は浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)をかき集めている。FSRUがあればLNGの輸入能力を簡単に増やせるようになるが、世界にわずか50隻しかない。港湾につなぎ留められたFSRUを使ってLNGを再ガス化し、陸上のパイプラインに送る。FSRUの建造にかかる時間は、固定された陸上ガスターミナル建設の約半分、コストはその6割で済む。財政の厳しい発展途上国にはとりわけ魅力的だ。欧州は現在、こうしたFSRUをエネルギー危機の解決策の一つと捉えている。欧州連合(EU)はロシア産ガス脱却を急ぐ必要があるが、最終的にはLNGからよりクリーンなエネルギーへの移行を目指している。2030年までに風力や太陽光といった再生可能エネルギーをエネルギー源全体の4割以上とすることを目標に掲げている。FSRUのリースは一時しのぎとしてぴったりだ。
欧州エネ戦争はLNG再ガス用の「戦艦」不足
浮体式貯蔵再ガス化設備「FSRU」の需要急増も世界に50隻のみ
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