やらなくていいことを見つけて、身軽になる
ハリス いいよいいよ、大輔はそれで。で、10年前頃でしたっけ、ベストセラーが出たのは。何だっけ、長いタイトルの。
四角 『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』という本です。移住して2年目の2012年なんですけど、これは僕の著書でいちばん売れた本なんです。
ハリス そうそう、捨てることについての本。僕、『人生の100のリスト』って本を出しているんだけど、この本、大輔の本と逆のこと言っているように見えるけれど、実は言っていることは同じなんだよね。
四角 そうですね。『人生の100のリスト』は、僕のバイブルです。この本を学生時代に読んで衝撃を受けたんです。「こんな大人がいるんだ!」って。この本が僕のルーツになっていて。
ハリス そうなんだ。
四角 2018年に、『人生やらなくていいリスト』っていう本を、ハリスさんの許可を得て講談社から出したんですけど。僕の本では2番目に売れてます。
ハリス この本は、『人生の100のリスト』へのアンチテーゼじゃないんだよね。
四角 はい、違います。タスク過剰時代において、実は「やらなくていいこと」はいっぱいある。「やらないこと」をどんどん決めて、勇気を持って「やりたいこと」にシフトしてほしい、という本だったんです。
ハリス まず身軽になって、そして軽やかな生き方を模索していこうってことね。
四角 まさにそうです。身軽さこそが自由の土台です。
ハリス でさ、そういったトピックスもありつつ、リサーチはしていたものの異国の土地に移住したわけね。
四角 はい、移住前に15回も通いました。
ハリス 慎重だねぇ。今住んでいるのは湖畔でしょ?東京とは真逆じゃない?
四角 小さな田舎町からさらに20km山奥の、原生林に囲まれた湖の畔に自宅はあります。
ハリス 水も湧水を汲み上げなきゃいけないんでしょう?
四角 そうです。自給自足が僕の一つのゴールで。レコード会社時代の実績やスキルは、ニュージーランドの大自然では何の役にも立たない。だが、幼少期からやっていた釣りや登山などのアウトドアスキルは、間違いなく役に立つ。自給自足という発想は、「仕事やお金がなくても衣食住があれば人は死なない」という考えにルーツがあるんです。
ハリス そうだね。多くの人は、仕事を変えることでシフトアップしようと考えるけれど、大輔の場合はシフトダウンを考えたんだね。
四角 はい。そっちの方が安心だったんです。