『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』を書いた理由。

私は25年前、前作の『ベスト・パートナーになるために 男は火星から、女は金星からやってきた』(三笠書房)を書いた。この本は50ヵ国語以上に翻訳される大ヒット作になり、現在も息の長いベストセラーとして150ヵ国以上の人々に読み継がれている。

著者として世界各地でインタビューを受けてきたが、今もっとも多く受ける質問はこれだ。「この25年間で、恋愛や男女関係のあり方はどう変わったのですか? あの本の内容は、まだ有効なのですか?」

はっきり言えるのは、世界がこの四半世紀で劇的に変化し、男女の関係にも大きな影響を与えたということだ。現代人は職場でも家庭でもますます多忙になり、ストレスも増した。働く女性が増え、男性にも家事が求められるようになり、カップルの関係も変わった。

男も女も、相手に物質的な豊かさだけではなく、心の支えを求めるようになった。私たちは従来のジェンダーの役割にしばられることなく、自由に自分を表現し、新しい形でパートナーと愛情に満ちた関係をつくれるチャンスを手に入れた。

だがこの変化は、新たな困難も引き起こした。生物学的には今でも男は火星人であり、女は金星人のままだ。そのことが、大きな誤解やストレスの源になっているのだ。つまり、自己表現の自由が以前より格段に増えた現代では、より良く生きるための新たなスキルが必要になる。それを読者に示すことが、本書の目的だ。

異性をよく知ることは人生の宝物になる

いま男女は大きな変化の時を迎えている。パートナーと満ち足りた関係を築くためには、時代に沿った新しい形で相手を支えなければならない。

だが、昔ながらの方法には頼れない。

男にはロールモデルがいない。男は父親を見て女性との接し方を学ぶ。だが父親の世代は、古い時代の価値観に従っていた。一昔前まで、男は働いて家族を養えば、女性との関係に求められる役割の大半を果たせると考えられていた。

女性にもロールモデルがいない。自分の望みをうまく男性に伝える方法は、誰も教えてはくれない。夫が家族を養っていれば、妻はそれ以上を求めることができなかった。

男はこれまで、愛情表現やポジティブな言葉がパートナーにもたらす価値を教えられてこなかった。相談して物事を決め、忙しい相手を助け、恋愛感情を持続させる工夫をし、カッとならずに議論をし、相手の気持ちに耳を傾ける方法を学んでこなかった。

女も同じだ。相手との違いを認め、不満をぶつけることなく自分の求めていることを伝え、恋愛感情を持続させるためにうまく役割を担う方法は、誰も教えてくれなかった。

男と女の新たなニーズ
──相手にとって一番大切なものは何か

一昔前の男に求められたのは、“生存と安全”という女性のニーズを満たすことだった。

だが現代の女性は、気持ちの分かち合い、恋愛感情、親密なコミュニケーション、対等な尊重といった、新しい愛の表現を求めている。また、自立や自己表現も強く求めるようになった。

男にも、女性とは違う新しい心のニーズがある。男は、“パートナーを幸せにしている”と思いたいのだ。家族を養うことを人生の成功基準と見なせた過去とは違い、妻や子どもを幸せにしようとする努力を評価され、感謝されたいと思っている。

この新しい心のニーズを知ることは、不満をぶつけ合うような関係から抜け出すために重要だ。私たちは相手にとって一番大切なものを知ることで、それを与えられるようになるからだ。

女性を幸せにできないかも、という不安から結婚に二の足を踏む男性は多い。だが、正しい知識があれば心配は無用だ。逆に言えば、この知識がなければ、結婚後に相手への情熱は薄れてしまう。

この新たな知識を得た男性は、自分に何ができ、何ができないのかを理解できるようになる。女性の幸せの責任をすべて背負っているわけではないと考えられるようになるので、パートナーが不満そうにしていても、自分を責めなくなる。男の自分には打つべき手がない状況も見極められるので、下手に事態を悪化させず、パートナーが自力で立ち直るのを待てるようにもなる。相手が一番喜ぶタイミングで、愛情を与えられるようになる。

現代では、男に失望して結婚しない女性も多い。非現実的なほど大きな愛を男性から与えてもらいたがるが、それを得る明確な方法もなく、結局は結婚を諦めてしまう。だが本書が示す新たな知識に従えば、自らの内なる女性の力を活用できる。すると、相手も自らの内なる男性の力を活用して、女性の求めるものを与えてくれるようになる。

現代人は、恋愛や人生を充実させたいと願っている。嬉しいことに、それは実現できる。

『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』を読んで、それを得る方法をぜひ学んでほしい。