変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。

「問題解決力が高い人」が持っているたった一冊の教科書とは?Photo: Adobe Stock

自分オリジナルの教科書をつくる

 私がかつてプロジェクトで一緒に働いた多くの先輩コンサルタントや結果を出している経営者は、皆それぞれに自分オリジナルの教科書を持っていて、どんなときでもそこから最適なフレームワークを持ち出しています。

 それらは一般の教科書に載っているような話ではなく、全て自分の実体験にもとづいて蓄積されてきたもので、非常に説得力がありました。

 それも、エピソードを交えて具体的に語るため、聞いていて大変面白く、かつ記憶に残りやすいという特徴もありました。

過去の事例をもとにしたケーススタディや
方法論だけでは戦えない

 世の中には、多くのビジネス書や経営の教科書が出版されています。日本国内にも多くのビジネススクールが設立されているため、MBAの取得もかつてほど難しいものではなくなりました。

 これらで解説されているのは、過去の事例をもとにしたケーススタディや経営学者が考案した方法論です。過去の事例や方法論を学ぶことは大変重要で、自ら経験せずともビジネスの基礎を身につけることができます。

 マイケル・ポーター氏や大前研一氏といった知の巨人たちの著作から学ぶ意義は大いにあります。

 一方で、それだけでビジネスで成功できるほど、現実は甘いものではありません。なぜならば、我々がビジネスで相手にしているのは生身の人間で、ビジネス環境は常に変化し続けているからです。

 また、当然ですが競争相手もそれらの著作を手に取ることができます。

 実際のビジネス現場で成功するには、自分だけの教科書をつくって、自分の置かれている環境で独自の成果を出せるようにしなくてはなりません。

真のプロフェッショナルは、
自分オリジナルのフレームワークを多数持っている

『V字回復の経営』などを執筆したことで有名な経営者の三枝匡氏はその著作で、真のプロフェッショナルが常に結果を出せるのは、「オリジナルのフレームワークを多数持っているからだ」と語っています。

 三枝氏は、MBAで習得するようなフレームワーク以外にも、実際のビジネス経験の中で習得する嗅覚のようなものもフレームワークだと整理しています。

 ゴールが明確で、会社に所属していれば役割が与えられる状況においては、会社の中で成果を最大化するためのマニュアル通りに動くことが重要です。マニュアル通りに動けば、ある程度の結果も伴うので、会社も成長し、会社における個人の役割も拡大します。

 しかし、環境や働き方の変化が激しい今の時代には、会社にしがみつくのではなく、個人でゴールを設定して、他のパートナーと連携しながら起業したり、新規事業を立ち上げたりして、自ら価値を生むことが求められます

 そのような社会では、オリジナルのフレームワークの数が勝負を決めると言っても過言ではありません。

 私自身が実践していることで他の人にも推奨しているのは、「仕事で心に留まった出来事やイベントをメモパッドに箇条書きでまとめる」というものです。

アジャイル仕事術』では、自分オリジナルの教科書をつくる具体的な方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。