株価が冴えない漢方の「ツムラ」、リスクが深刻化する中国事業の中身Photo:Diamond
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 国内漢方最大手・ツムラの株価が今ひとつ冴えない。昨年3月に4200円まで上昇した後はにわかに失速し、今年6月には2800円割れ寸前となるまで下落した。新型コロナウイルスの「第7波」が襲った夏の間こそ3100円台をキープしたものの、11月上旬には再び2900円台に沈むといった値動きだ。

 足元の業績は悪くない。「好調」の部類と言ってよいだろう。11月4日に発表された23年3月期第2四半期決算は、連結売上高が前年同期比10.5%増の701億700万円、連結経常利益は同19.1%増の159億6500万円と、ともに2ケタの幅で伸長した。

 国内で積極展開しているeプロモーションのおかげか、「葛根湯」や「麻黄湯」といった風邪関連の処方が本来はシーズンオフであるにもかかわらず大きく伸び、不安や不眠などに用いられる「加味逍遙散」や「加味帰脾湯」、眩暈などに用いられる「五苓散」も拡大した。“コロナ様様”とは口が裂けても言えないだろうが、これに、円安による為替差益の拡大という追い風も吹いた。

 23年度下期を見通しても、経営のファンダメンタルズに大きな懸念材料は見られない。新型コロナの「第8波」にインフルエンザの流行も加わる“ツインデミック”が現実味を増すなか、今後も出荷制限というブレーキよりも、医療機関からの引き合い増というアクセルの力のほうが上回ることだろう。後発品業界を業火で包む国内薬価の下げ圧力も、持ち前の政治力で跳ね除けている。

 実際、23年3月期の通期売上高は前年比6.9%増の1385億円を予想する。創業一族による特別背任と「小柴胡湯」の副作用とで倒産寸前に追い込まれた往時を知る関係者からすれば、隔日の感であろう。にもかかわらず、株価の上放れが起きない理由はほかでもない。中国リスクが、どう好意的に解釈しても「予見可能」な状態とは言えないからだ。