「漢方薬のツムラ」の課題は中国市場への逆進出、アナリストの懸念とはPhoto:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 ツムラが直面する最重要課題は成長だろう。20年度の国内の医療用医薬品市場規模は約10.3兆円と推定され、そのうち医療用漢方薬は1610億円、シェアに換算すると約1.6%である。

 国内の医療用医薬品市場規模は21年度から施行された毎年薬価改定により縮小均衡が予想される厳しい環境にある。そのなかで医療用漢方薬は、市場平均を上回る伸びを遂げることが可能だろう。医療用漢方薬は新製品の承認取得が困難なため、医療用漢方薬の国内市場シェア80%超を保持するツムラにとって、シェア拡大による成長は見込みにくい。薬価(販売価格)を維持することが唯一の防衛策とみられる。

 ツムラは長年にわたり薬価維持によるトップラインの確保に努めてきた。例えば21年度の薬価改定では大手企業と準大手企業、外資系企業の平均改定率は、概ね2~4%台の引き下げを受けた。長期収載品や後発品を多く手掛ける企業は6~8%と20年度改定以上の大きな影響を受けたところもあった。後発品メーカーは10%前後の引き下げを被った一方、医療用漢方薬を主力とするツムラの改定率はゼロであった。薬価を維持することで市場平均を上回る伸びを確保するという正攻法だ。

 ただし薬価維持だけでは限界がある。そこでツムラが成長戦略としてめざすのは、国内の医療用漢方薬の裾野拡大と中国市場への逆進出、である。