「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。(初出:2023年1月8日)

【小児科医が教える】骨がゆがむ病気の子どもが4倍に増加! その理由とは?【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

ある栄養素が不足すると、子どもの骨に影響が出る

 ビタミンDは鮭、サーモン、いわし等に豊富に含まれ、以前から「骨に必要なビタミン」として知られています。しかし、日本人(だけではありませんが)のほとんどがビタミンD不足です[*5]。

 子どものときにビタミンDが欠乏すると、

 ●脚の骨がO脚にゆがむ
 ●頭の骨がやわらかいままになる
 ●ろっ骨が飛び出る

 などの症状が起きます。

 私が行った研究で、2009~2014年までの期間にビタミンDの欠乏で骨がゆがむ「くる病」と診断された子どもの数が、約4倍に増えたことがわかりました[*6]。

 これは、

 ●親が食物アレルギーを過度に恐れ、離乳食でビタミンDを含む卵や魚などの導入が遅れた子どもが多かった
 ●日光不足の子どもが増えた

 ことが要因と考えられました。

 人間が必要とするビタミンDの約8割は、太陽が皮膚に直接あたることで作られます。しかし近年、日本は日焼けを極端に避ける人が増えています[*7]。日傘や日焼け止めクリームなどを利用した完璧な紫外線対策で、ビタミンDを作る機会が減ったことも日本人のビタミンD不足の要因と考えられています。

 かといって、日光に積極的にあたることは皮膚がん、シミやしわの原因になることから、強くはすすめられません。

 卵はできる限り毎日食べるとして、鮭、サーモン、いわしのいずれかを1日おきに1回あたり約100g食べるのが理想です。

ビタミンDは、子どもの脳にも関係している!

 脳が発達する時期(胎内にいるとき~0歳)にビタミンDが欠乏していると、自閉症や発達障害になりやすいことが複数の研究で示されています[*8,9]。

 大人では血中のビタミンD濃度が低いとアルツハイマー型認知症に3倍もなりやすいという研究結果もあります[*10]。また、うつになりやすいというデータもあります[*11]。

 脳にはビタミンDのリセプター(細胞の表面にあるアンテナのようなもの)があることがわかっています。リセプターがあるところでだけ、その成分は作用します。つまり、ビタミンDは脳の細胞に直接作用する、とても大切な栄養素なのです。

ビタミンDが不足していると感染に弱くなる?

 ビタミンDは免疫にも深く関与しています。そのため、ビタミンDが不足していると感染症、アレルギーになりやすく、がんにもなりやすいことが研究で示されています[*12~15]。

 可能なら、血液検査でお子さんの血中ビタミンDの値を調べてみましょう。

そんなに魚を食べるのは無理…と思ったら

 食べ物だけで十分な量のビタミンDを摂取することは、難しい方も多いと思います。魚が苦手なお子さんもいますしね。

 そんな場合はサプリメントの活用をおすすめします。

 乳幼児でも飲める、安全な液体のビタミンDがサプリメントとして存在します。4歳以上なら問題なく飲める、小さい錠剤タイプもあります。

 ビタミンDは食べ物からだけではなかなか十分な量を摂取することができませんが、サプリメントを毎日摂ることで改善していきます。

 ただし、信頼できるサプリメントを検討しましょう。ネット販売のサプリメントは粗悪品も多く、誰も品質を保証してくれないのでおすすめしません。医師に相談してみましょう。

 このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・改変したものです)

【訂正】記事初出時より次のように修正しました。タイトル「5倍に増加」→「4倍に増加」。記事前半「くる病」と診断された子どもの数が、約5倍に増えた →「くる病」と診断された子どもの数が、約4倍に増えた 読者の皆様にお詫びいたします。(2023年8月17日4:00 書籍オンライン編集部)
*5 Asakura K, et al. Vitamin D Status in Japanese Adults: Relationship of Serum 25-Hydroxyvitamin D with Simultaneously Measured Dietary Vitamin D Intake and Ultraviolet Ray Exposure. Nutrients. 2020; 12(3):743.
*6 Kuraoka S, et al. Impaired Height Growth Associated with Vitamin D Deficiency in Young
Children from the Japan Environment and Children’s Study. Nutrients. 2022; 14(16):3325.
*7 Itoh M, et al. Vitamin D-Deficient Rickets in Japan. Glob Pediatr Health. 2017 Jun 1; 4.
*8 Cannell JJ. Vitamin D and autism, what's new? Rev Endocr Metab Disord. 2017 Jun; 18(2):183-193.
*9 Guiducci L, et al. Vitamin D Status in Children with Autism Spectrum Disorders: Determinants and Effects of the Response to Probiotic Supplementation. Metabolites.
2022 Jul 1; 12(7):611.
*10 Chai B, et al. Vitamin D deficiency as a risk factor for dementia and Alzheimer’s disease: an updated meta-analysis. BMC Neurol. 2019; 19(1):284.
*11 Anglin RE, et al. Vitamin D deficiency and depression in adults: systematic review and meta-analysis. Br J Psychiatry. 2013 Feb; 202:100-107.
*12 Afaghi S, et al. Prevalence and Clinical Outcomes of Vitamin D Deficiency in COVID-19 Hospitalized Patients: A Retrospective Single-Center Analysis. Tohoku J Exp Med. 2021; 255(2):127-134.
*13 de Haan K, et al. Vitamin D deficiency as a risk factor for infection, sepsis and mortality in the critically ill: systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2014; 18(6): 660.
*14 Bener A, et al. The impact of Vitamin D deficiency on asthma, allergic rhinitis and wheezing in children: An emerging public health problem. J Family Community Med. 2014; 21(3):154-161.
*15 Almehmadi M, et al. Prevalence of vitamin D deficiency in early-diagnosed cancer patients: A cross-sectional study. Annals of Cancer Research and Therapy. 2020; 28(2):54-59.