「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【小児科医が教える】朝ご飯に食べると、お友達に優しくなれる食材とは?Photo: Adobe Stock

朝ごはんに食べてほしい食材ナンバー1は?

 医学的なデータによる答えは、ずばり「卵」です。

 毎朝、卵を1個食べていただきたいです。

「卵を食べすぎるとコレステロール量が増える」というイメージが強く、いまだに卵は控えたほうがいいと思っている方がいます。

 しかしこれは誤解です。食品に含まれるコレステロール量が血液でのコレステロールに影響しないという研究結果が相次ぎ、卵の制限はしなくてよいと発表されています(2015年)[*1]。

 卵は良質なたんぱく源なので毎日1~2個食べるのがおすすめです。

 人間に必要なたんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されており、卵はその20種類のアミノ酸すべてをバランスよく含みます。体内で作ることができない9つのアミノ酸を効率よく摂れる、とても優秀な食材です。

どうして朝ごはんに食べるといいの?

 1995年の研究で、たんぱく質をしっかり摂った人と摂らなかった人を比較したところ、「たんぱく質を摂らなかった人の攻撃性が増した」という結果が出ています[*2]。

 また2017年の研究では、朝食にたんぱく質をしっかり摂った人と摂らなかった人では、「しっかり摂った人は、周囲の人をより受け入れることができた」という結果が出ています[*3]。

 つまり、周りの人にやさしく接することができたということです。

 ですから朝食のメニューには、ぜひたんぱく質を取り入れてください。おだやかに1日を過ごせるようになります。たんぱく質のなかでも卵は取り入れやすいのでおすすめですよ。調理法はゆで卵がよいでしょう。

朝、昼、晩にたんぱく質を

 たんぱく質は、筋肉や骨、皮膚のもとになるだけではありません。ウイルスや菌などに感染したときに働く抗体やホルモン、幸せホルモンのセロトニンをはじめとする、脳内ホルモン(神経伝達物質)のもとにもなる大切な栄養素です。

 しかし摂取したらすぐに代謝(化学反応で別のものに変化すること)されるので、たんぱく質は体の中に貯めておくことができません。ですから毎食、たんぱく質を含む食事を心がけてほしいところです。

 クリニックの診察室でお話を聞いていると、ほとんどの子どもがたんぱく質を摂っているのは「給食」、もしくは「夕食」。「朝食」にたんぱく質を摂っている子は少数です。焼き鮭や豆腐のみそ汁を朝食の献立に加えてみてください。

 朝食、昼食、夕食、それぞれでたんぱく質の摂取を心がけましょう。毎食、手のひら(指の先まで)1杯分のたんぱく質食材を食べることをおすすめします[*4]。

 このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・改変したものです)

*1 菅野道廣. 卵と健康:コレステロール問題を中心に. 日本食品科学工学会誌. 2019; 66(9):362-367.
*2 Cleare AJ, et al. The Effect of tryptophan depletion and enhancement on subjective and behavioural aggression in normal male subjects. Psychopharmacology(Berl). 1995 Mar; 118(1):72-81.
*3 Strang S, et al. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20; 114(25):6510-6514.
*4 Tagawa R, et al. Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2020; 79(1):66-75.