「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【毎日大さじ1杯!】医者が、“心に悩みを抱える”子ども&大人に食べてほしい食材とは?Photo: Adobe Stock

毎日大さじ1杯の「すりゴマ」を

 日本人は平均してカルシウム、亜鉛が不足しています[*21]。

 カルシウムは骨と歯だけでなく、全身に必要なミネラルです。

 亜鉛は免疫を強化する働きがあり、新型コロナウイルス感染症の蔓延で世界的に注目されたミネラルです。

 残念ながらどちらも多くの人が不足しています。このカルシウムと亜鉛を豊富に含むのが、すりゴマです。

 亜鉛が不足すると味覚障害、嗅覚障害が起きやすい[*22]ことも研究で示されています。また、亜鉛は情緒・メンタル面でも重要な役割[*23]を果たします。情緒面や心の悩みのある子ども(大人も)の血液を検査すると、亜鉛不足の結果が出ることも多いです。その場合、しっかり亜鉛を補うことで、改善することが多数の研究で示されています。実際、私のクリニックでも血液検査後に、亜鉛を処方しています。

 ちなみに「情緒」と「メンタル」の用語は次のように使い分けています。ご参考までに。

 ●情緒 = 脳の原始的、本能的な感情。症状としては不安、怒り、恐怖など
 ●メンタル = 精神面。症状としては気分の落ち込み、不眠、集中力の欠如など

ゴマは脳にもいい?

 セサミンはゴマに含まれる栄養素で、抗酸化力がとても高いことで知られています。抗酸化力とは、炎症を抑え、病気のなりやすさと老化を抑える力のこと。ですから高齢者の関節や脳によいだけでなく、子どもの脳機能、免疫強化、皮膚の健康など、全身に役立ちます[*24,25]。

毎日大さじ1~2杯のすりゴマでおなかも元気に

 ゴマは食物繊維もたっぷり含み、かつ微量栄養素(微量ながらも、カラダの機能を維持するために必要な栄養素のこと)も豊富なので、腸活にも最適の食材です。

 そのままのゴマよりも、すりゴマのほうが吸収率が高く、腸粘膜からの微量栄養素の吸収も高まります。毎日大さじ1~2杯の摂取を目指しましょう。

 ゴマに含まれる亜鉛は、緑茶やコーヒー、穀類・豆類と同時に摂ると、吸収率が下がってしまうことがわかっています。ただ、吸収阻害を気にしすぎると献立が難しくなることもありますね。亜鉛はそもそも吸収率が低めのミネラルなので、ゴマだけでなく、牡蠣、かつお(かつお節)など、亜鉛リッチな食品を意識してたっぷり食べることをおすすめします。

 すりゴマは大さじ2杯でエネルギーが約98kcal。これはごはん半膳ほどに相当するので、1日に大さじ2杯程度までにとどめましょう。

 ゴマアレルギーの方は意外といらっしゃるので、気になる場合は、検査を受けてみましょう

 このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・改変したものです)

*21 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査報告.
*22 児玉浩子. わが国の臨床医学・医療での微量元素に関する最近の動向と今後の課題.
日衛誌(Jpn. J. Hyg.). 2018; 73:75-82.
*23 Petrilli MA, et al. The Emerging Role for Zinc in Depression and Psychosis. Front Pharmacol. 2017 Jun 30; 8:414.
*24 Kong X, et al. Sesamin Ameliorates Advanced Glycation End Products-Induced Pancreatic β-Cell Dysfunction and Apoptosis. Nutrients. 2015; 7(6):4689-4704.
*25 Wang Q, et al. Supplementation of Sesamin Alleviates Stress-Induced Behavioral and Psychological Disorders via Reshaping the Gut Microbiota Structure. J Agric Food Chem. 2019; 67, 45:12441-12451.