株式投資をする人たちの間で大きな支持を集めている話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズを答えていくだけで、「株式投資のコツ」や「株の売買タイミング」がつかめる手軽さが人気だ。「チャートを勉強したけど成果が出ない……」。その原因はどこにあるのか。チャートで稼ぐにはどうすれば良いのか。『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に話を聞いた。(取材・構成/伊達直太)
ほとんどの銘柄は上がるか下がるか判断できない
チャートを使った株のトレードで重要なことは、「買い」または「売り」のシグナル(株価の方向性を示唆する情報)を見つけることです。
ただし、シグナルがわかるようになっても、全ての銘柄で稼ぐことは不可能です。なぜなら、大多数の銘柄は明確なシグナルがなく、上下どちらに動いても不思議ではないからです。
強い買いシグナルが出ている銘柄は多くありません。明確なシグナルが出ていない銘柄で稼ごうとしても、勝率が下がるだけですので、リスクを取ってまで売買する必要はありません。ほとんどの銘柄は「中立」の判断です。
厳密に見れば、市場には3000以上の銘柄が動いていますので、時間足や分足など短期のチャートで強いシグナルが出ている銘柄があります。
しかし、短期のチャートで出るシグナルは、週足や月足といった長期のチャートで出るシグナルより短命で、時間足チャートなら数時間、分足チャートなら数分でシグナルが消えてしまうことがほとんどです。
デイトレードではこのようなチャンスを生かしますが、一般的な個人投資家が、数日から数週間以上の保有で5%や10%といった利益を狙うのであれば、日足や週足のチャートで強いシグナルを見つける必要があるのです。
週末に全銘柄のチャートをチェックし、「◯」「△」「×」をつける
ファンドマネジャーだった頃、私は毎週土日に東証一部(今の東証プライム市場)の全銘柄の週足チャートをチェックし、買いシグナルが出ている銘柄に「○」、中立には「△」、売りには「×」印をつけていました。大量に見るので、1銘柄に数秒しかかけず、サッサと投資判断をくだします。
その評価を踏まえて翌週からのトレードをしていくわけですが、ほとんどの銘柄は、買いや売りの明確なシグナルが出ていない「△」です。
「◯」か「×」がつく銘柄は、相場の状況にもよりますが、全体の2割ほどといっていいかもしれません。
保有している銘柄に「×」がついた時は、週明けから問答無用で売りに行きます。売買高が少なくてすぐにすべて売るのが難しい時は、とりあえず保有株の半分を売ることを目指します。
「〇」がつく銘柄にも注目します。強い買いシグナルが出る銘柄は、積極的に買いにいきます。まあまあ強い買いシグナルならば、少し打診の買いを入れます。
強い買いシグナルが出ている銘柄を買いに行く時は、株価を上昇させながら買っていくことになります。それでも買いの勢いが強いので、さらに上がっていくところで、利益を得ることができます。