コリ、痛み、冷え、だるさ、むくみ、疲れ、便秘、不眠といった、なんとなくの不調。『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは、人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえるメソッド
体のゆがみを正しい位置へ戻し、筋肉や関節のコリをリリースして、不調を根本から取り除くワークだ。現在、若い世代から高齢の方まで約1万5000人が実践している。東洋医学をベースにしながら効率的に問題解決するのも人気の秘訣。なぜ「自力整体」はいいのか?(構成/依田則子 撮影/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

ウォーキングをする前に知っておかないとマズいこととは?【整体プロのアドバイス】

ゆがみを放置したままウォーキングをすると、どうなるの?

――私はウォーキングをおこなうと、右ヒザに痛みが出やすいのですが、右肩が左に比べて下がっているので、それが影響しているのでしょうか?

矢上真理恵(以下、矢上):おそらく、右肩(肩甲骨)が右側に下がっているため、骨盤が右に傾き、右ヒザに負担がかかっているのかもしれません。

 ウォーキングは手軽な健康法ですから、続けるためにもゆがみは放置せず、しばらく週に2回以上、『すごい自力整体』で紹介した「20分間ショートレッスン」を続けみてください。

 これは、人体のベースとなる骨盤を中心にほぐし、ゆるめて、ゆがみやねじれを正しい位置へ戻していくので、おすすめですよ。

――ところで、ゆがみやねじれを放置したままウォーキングなどをおこなうと、どんなことが体に起こりやすいでしょうか?

矢上:そうですね。歩けば歩くほど、コリや痛み、不調が出やすくなりますし、とくにヒザを痛めやすいと思います。長距離を歩くと、股関節痛や腰痛、首のコリも出やすいですね。

 さらに長い目で見ると、加齢により骨格を支える筋力が低下して、とくに骨格のゆがみが深刻になり、歩行困難につながりやすくなります。ちなみに、ひと昔前に良いとされていた「かかと着地」の歩行は、関節への衝撃が強くかかるため、気をつけたほうがいいですね。

――「かかとで着地して、つま先で蹴る」という歩行法ですよね?

矢上:そうです。「かかと着地」は骨格にゆがみやねじれのある方、関節にズレのある方は、痛みが出やすくなるんです。

――どのような歩き方がよいでしょうか?

矢上:「かかと着地」に偏りすぎず、「つま先を意識して歩く」といいですよ。

 かかとから着地すると、足首、ヒザ、股関節などの足の関節がのびて、ロックされてしまい、地面からの衝撃をそのまま、ヒザ、股関節、腰椎、頚椎に与えてしまいます。

 反対に、「つま先着地」にすると、それらの関節がロックされないため、クッションとなり、ウォーキングの際にかかる、関節、脊椎への負担を柔らげることができます。

 しかし、歩き方をあれこれ意識するよりも、日ごろからゆがみを調整する意識が肝心です。そのためにも、ご自身の体のゆがみに気づくことは大切ですね。『すごい自力整体』には、ゆがみのセルフ診断法も紹介していますので、ぜひ役立ててください。

――先程、長距離のウォーキングは、股関節痛や腰痛、首のコリも出やすいとうかがいましたが、上半身にも痛みやコリが出るのは意外ですね。

矢上:私自身も、ゆがみを放置したままフルマラソンを走った時、10キロあたりでくるぶしが痛くなり、その後、ヒザ、腰、首へと、だんだん痛みが上に上がってくる感覚を体感しました。ゆがみをかばおうとする動きが、足もとから上へと伝わり、最終的に首のコリへとつながったんだと思います。

 ですから、運動習慣のある方は、体のゆがみやねじれを調整する「自力整体」も並行しておこなうとよいですよ。

ウォーキングをする前に知っておかないとマズいこととは?【整体プロのアドバイス】矢上真理恵(やがみ・まりえ)
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。 写真/榊智朗

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。