バウマイスターらが行った実験では、研究チームは学生の被験者を集め、そのうち半分に「日々の生活でやり残したことをToDoリストにまとめてください」と依頼。そのうえで、リストとまったく関係ない小説を読むように指示しました。ToDoリストといえば一覧にした作業を順にこなすのが本来の使い方ですが、ここではあえて関係ないタスクを実行させて、どのような違いが出るのかを調べたわけです。

 その結果は、興味深いものでした。事前にリストを作ったグループは、そうでないグループよりも小説に集中して取り組むことができ、読書のあいだも注意がそれにくくなったのです。

 理由を説明すると、まず前提として私たちの脳は、すでに完了したタスクよりも未完了のタスクや中断されたタスクに意識が向かう性質があります。

 片づけの途中で放り出したクローゼット、手つかずで放置した請求書、完成なかばのプレゼン資料、めんどうで返していないメール。

 このような未完の作業に対してあなたの脳は無意識に不安を抱き、別のことをしているあいだも、やり残したタスクにリソースを分配。そのせいで目の前の仕事に割くための処理能力が減り、最後には全体の生産性まで下がってしまいます。この現象を、認知科学では「注意の残留」と呼びます。

 しかし、このときあらかじめToDoリストを作っておくと、私たちの脳はおもしろい反応を見せます。未完了のタスクをすべて書き出したことで、脳が「このタスクはすでに処理されたから安心だ」と思い込み、目の前の作業ヘリソースを解放し始めるのです。

 すなわち、ToDoリストがうまく機能するのは、やり残したことを外部にすべて吐き出したことで脳が安心し、持てる力をすべて発揮できるようになったからです。これを予期と想起のフレームワークで言い換えれば、ToDoリストが効果を発揮しやすいのは、次の特性を持った人だと言えます。

・予期が多すぎる人

 違う作業をしているあいだに、「頼まれた資料集めを忘れていたから、これを終わったらやろう......」や「部屋の掃除が途中だから帰ったら手をつけないと」といった未完の予定が浮かび、それが頭から離れないタイプ

・想起が否定的な人

「このタスクは以前もうまくいかなかった」や「明日使う資料を置き忘れたのでは......」などのネガティブな思考が浮かびやすく、不安にとりつかれやすいタイプ

 どちらのタイプも、不意に脳内にわきあがるイメージに気をとられ、そのせいで脳のパフォーマンスが下がってしまう点が共通しています。逆に言えば、あまり過去にとらわれない人や、マルチタスク作業が得意な人には、ToDoリストが効きづらいと言えるでしょう。