「一つ上の立場に立ったつもりで仕事を考えてほしい」と部下に訴える上司は少なくありません。広い視野で仕事の全体像を把握することで、より的確な行動や判断ができるからです。その発想自体は悪くないのですが、そう言われた部下の多くはピンときません。なぜなのでしょうか、そして上司はどうすればよいのでしょうか。部下に「一つ上の立場で」を、具体的にイメージしてもらうための方法について説明します。(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)
一つ上の立場に立ったつもりで
仕事を見てもらいたい上司
部下に、もっと高い視点から仕事全体を把握してほしいと思っている上司の話をよく聞きます。自分の仕事だけに目を向けるのではなく、一段高いところから全体を見て視野を広げることで、より的確な行動や判断ができるという理由です。
そのような上司がよく使うのが次の言葉です。
「一つ上の立場に立ったつもりで仕事を考えてほしい」。
課長代理なら課長という立場で、課長なら部長という一つ上の立場で仕事を考えてみるということです。
この発想自体は良いのですが、いきなりそう言われた部下の多くは戸惑ってしまいます。「一つ上の立場に立つ」というのがあまりにも抽象的で、一体、何をどう考えてよいのかピンとこないのです。そもそも人は、自分が経験したことがないことをイメージすることは困難なのです。
では、部下に一つ上の立場から仕事を見てほしいという上司の思いは、ないものねだりなのでしょうか。
いえ、そういうわけではありません。部下がピンとこないという現実を踏まえた上で、実は、それを実現するための効果的なトレーニング法があるのです。
今回は、その効果的なトレーニング法について解説していきましょう。