キリンビールが2022年12月より、取引先の特約店(卸)に対して、取引条件の変更を通知していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。ビール業界の長年の商習慣を変える内容で、既存流通網の「リストラ着手」と捉える声も上がる。キリンは一体何を変えようとしているのか。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
キリンが取引条件の変更を特約店に通知
240社への“支援金”を一部廃止か
キリンビールが取引先の特約店(卸)に対して、2022年12月から取引条件の変更の通知を始めたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。
特約店はビールメーカーから商品を仕入れ、酒販店や小売店などに販売する。この際、特約店は取引を継続的に行うための担保として、一定額の「取引保証金」をビールメーカーに預ける商習慣がある。ビール大手4社に共通する制度で、特約店は保証金を差し出す代わりに、“破格”の金利収入を得ることができていた。
今回、キリンが取引条件の変更を通知したのは、取引保証金の返還に関するもので、対象となるのは約240社にも及ぶ。
取引保証金の金利という、ビールメーカーから特約店への“支援金”の一部廃止を意味し、既存流通網の「リストラ着手」と受け止める声も業界では上がっている。ある特約店の首脳は「激震中の激震だ」と打ち明ける。
キリンは22年のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)シェアで、アサヒビールに3年ぶりとなる首位奪還を許し、2位に転落した。良好とはいえない事業環境の中、競合に先んじてビール業界の商習慣に切り込む理由はなぜか。
ダイヤモンド編集部は、キリンが取引先に示した通知文書を独自に入手した。次ページでは、通知文書を基に、キリンが取引条件の変更を取引先に通知した狙いを明らかにする。