ビール最大手のアサヒビールとキリンビール。実は役職定年制度の内容は両社でほぼ共通している。ビールのシェア争いでしのぎを削った両社のシニア層待遇に共通するものとは?「57歳」を機に年収は激減し、約半数が退職する例もある。一方、ハウス食品などの中・小規模の食品会社ではまた別の風景が広がっている。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#5では、食品業界の役職定年事情を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
アサヒ、キリンに共通する役職定年
開始年齢、給料の減額幅など内容は?
長年熾烈なシェア争いを繰り広げてきたビール最大手のアサヒビールとキリンビール。そんな永遠のライバルであるアサヒとキリンだが、共通項がある。役職定年制度だ。
役職定年制度とは、一定の年齢や職位になると、役を解かれ部下なしとなり、年収が激減する制度のこと。
両社は、ビール業界の最盛期の1980~90年代にこぞって新卒社員を大量採用したという経緯がある。大規模な生産工場を全国各地に持ち、生産・開発現場に必要となる社員数は他の食品メーカーと比べても圧倒的に多い。営業現場も同様で、飲食店舗にローラー営業をかけ、ライバル会社のビールサーバーを自社のものとすげ替えるリプレイス営業、それにスーパーの冷蔵ケースの優位置の奪い合いなど、多くの営業マンが必要となるからだ。
87年にアサヒがスーパードライを発売し、それまで長年圧倒的なトップシェアを謳歌してきたキリンの牙城をひっくり返した。当時はバブル期ということもあり、ビール課税出荷数量は94年にピークを迎えていた。
そんな黄金の時代に入社したバブル期入社社員たちが、ここへきて役職定年の対象年齢にさしかかっているのだ。
では両社は具体的にどのような役職定年制度を敷いているのか。実際に役職定年を経験した社員などへの取材を基に実額で明らかにしていこう。中には、年収が500万円近く激減したり、発言権を持ったまま老害化したりするケースもある。また、他の食品企業の事例も紹介する。