多結晶シリコン国内最大手のトクヤマが、急激な業績悪化に苦しんでいる。太陽光バブルの崩壊によるシリコン市況の悪化と、マレーシアへの大型投資が負担となり、身動きができない状況だ。
2011年2月、マレーシア・サワラク州でトクヤマの新工場起工式が盛大に開催された。取得用地200万平方メートル、総投資額2000億円という工業団地初のビッグプロジェクト。その式典に集まった地元政府首脳ら関係者5000人を前に、幸後和壽社長は「この工場をステップに18年の創業100周年に向け躍進する」と宣言してみせた。
それから約2年。トクヤマの業績は急速に悪化した。12年度上期は連結決算を始めて以来初の無配。通期業績も下方修正し、25億円の最終赤字に転落する見込みだ。
設備投資額は11年度から急増し、12年度は972億円に上る見通し(図1)。その約8割を占めるマレーシア工場建設によって生産能力を引き上げる多結晶シリコンが販売数量、価格共に大幅に落ち込み、業績悪化の主因となっているのだ。
トクヤマの事業構成はカセイソーダや塩化ビニルモノマーを有する化成品事業、多結晶シリコンなどの電子材料を有する特殊品事業、セメント事業、医薬品原料やフィルムなど多様な製品を持つ機能部材事業の四つから成る。
売上高はこの四つがバランスよく構成されているが、営業利益は特殊品事業が過半を占める(図2)。まさに多結晶シリコンが同社の利益を牽引してきた。