今回の資本提携見直しの動きは、昨年2月にルノーがEV(電気自動車)事業の分社化を公表したことにさかのぼる。ルノーは、この自動車大変革時代に対応した事業改革に乗り出し、特にEV化が先行する欧州地域を強化するべくEV専業の「アンペア」を23年後半に設立、上場させる予定だ。ルノーがこのアンペアにEV技術で先行する日産と三菱自の参画での協業を要請したのだ。

 今回の3社の首脳会見では、ルノー・日産の資本関係見直しとともに日産はルノーのEV新会社アンペアに最大15%出資することで合意し、三菱自も「出資を検討」とのコメントを発表、3社が協業する方向で一致した。

 日仏3社連合にとって大きな転機となる今回の動きは、ルノーがEVを軸に据えた生き残りへ資本関係を見直し、親会社の立場を捨ててでも新たな協業関係を築きたいとの意向が強かったということだろう。ルノーは2019年度と20年度に連結業績で赤字転落し、22年度の業績もロシア・ウクライナ問題によりドル箱だったロシア事業から撤退したことで損失を計上しており、事業構造改革の必要性は切迫している。ルノーに15%出資する仏政府も今回の合意に同調しており、仏政府から日本政府に書簡が送られてきたことを西村康稔経済産業相が1月に明らかにしている。

 日産サイドとしては「悲願達成」ということになるが、ここに至るまで内部ではいろいろな議論があったようだ。昨年11月にルノーが事業改革説明会を発表した中で、EV新会社アンペアに半導体大手の米クアルコムが出資するとともに、米IT大手のグーグルと車載向け基盤ソフトなどの共同開発で提携すること、内燃機関エンジン新会社「ホース」には中国・吉利汽車(ジーリー)と折半出資することを明らかにした。これに対して日産内部では「知的財産」流出の懸念も出た。