「仕事時間の4割が人を動かすことに使われている」。そう聞くと人を動かすことが苦手な人は「地獄」だと感じるのではないでしょうか。でもそんな人でも「しくみ」をつかえば他人を動かすことはできる。そう話すのが間もなく発売となる『「口ベタ」でもなぜか伝わる 東大の話し方』の著者、高橋浩一さんです。本連載は「他人を動かすくらいなら自分でやったほうがまし」と思う方にこそ読んでいただきたい、他人を動かす話し方について書かれたものです。
「東大生」はみんな口ベタ!?
「なんであの人は口ベタなのに、気づいたら自分の思い通りにコトを運んでいるんだろう」
東大に入ったとき、僕はいつもそう思っていました。
東大生といえば立板に水のように話し、鋭い切り口で相手を説き伏せ、思い通りに他人を操る……。
そんなイメージがありました。
でも実際に入学してみると、周りは僕同様口ベタで、話が上手でない人がたくさんいました。
にもかかわらず、思い通りに物事を進める人が多いのです。
口ベタなのに人を動かすという「謎」
僕は小さいころから他人と話せず、小学校では1日中、隣の席の子と会話ができませんでした。
ただ東大に入ると、小中高時代にいた「コミュ力」の高い人の割合は減り、どちらかというと僕同様、人と話すことが苦手で口ベタな人が多くいました。
でも、東大生は話すことはうまくないものの、発言がわかりやすくて説得力があり人を動かすのがうまいのです。
弱者の戦略:「ノー」と言わせない
彼らを見ながらだんだんとわかってきたことがあります。それは、
相手から強引に「イエス」を勝ち取るというよりは、「断られない」「ノー」と言われにくい(減点されにくい)ツボを押さえた話し方を戦略的に選んでいるということです。
東大生は「相手や場の状況に合わせて」「相手がほしい言葉を基本パターンにのっとって」「地雷を踏まず、減点されない形で(ノーと言われないスタイルで)」伝えることで人を動かすことが身についているようなのです。
「東大の話し方」とは?
整理をすると東大生は、
①相手のタイプを見極める
②相手の「ツボ」を押さえながら相手が動く理由を作る
③地雷を踏まない(NOを食らわない)形で伝える
という「3ステップのしくみ」で人を動かしているようなのです。
相手の脳ミソに逆らわない
この3ステップの根幹にあるのは「相手の脳ミソに逆らわない話し方をする」というものです。
東大を受験するときも、単位をもらうときもいちばんキーになったのは、「出題者や教授が何を大事にしているかを想像し、相手から『ノー』(減点)を食らわないようにするには、何をどう伝えればいいかを考える」ということでした。
これは話し方も同じで、この「客観的思考力」をベースとした話し方を知ったことで、口ベタだった僕の人生は驚くほど変わりました。
「しくみ」を使えばうまくいく
人とうまく話せなかった時期、「僕にはコミュニケーションのセンスがまったくない。自分はなんてダメな人間なんだ……」とずっと悩んでいました。
でも、コツをつかんで自信をつけた後は、むしろ「もともと口ベタだった僕だからこそ、残された方法(=「しくみ」の存在)に気づくことができた」と思っています。
もし自分がスラスラ人と話せるようなセンスやスキルを持っていたら、「しくみ」の存在に気づくことなく感覚だけで話していたと思います。
このしくみを身につけて、話すことへのコンプレックスが薄れた今、僕は起業し、4万人以上の方の営業強化支援に携わり、年間200件以上の講演や研修に登壇するようになりました。
※本書には、そのメソッドの詳細が収録されています