韓国経済の先行き不透明感が一段と高まる

 今回のSKハイニックスの決算は、韓国経済の先行き懸念を高める要因となるだろう。メモリなどの半導体は、韓国の輸出の約2割を占める最重要品目だ。足元、半導体を筆頭に韓国の輸出減少が鮮明となっている。1月の輸出は前年同月比で16.6%減少し、貿易赤字も拡大した。

 今後の展開の一つとして、半導体メモリ市況がさらに悪化し、サムスン電子やSKハイニックスなど財閥系大企業の業績がさらに悪化する恐れは高まっている。それが現実になれば、韓国の輸出は一段と減少するだろう。中国向けを中心に輸出依存度の高い韓国経済において、雇用・所得環境の不安定感が高まりそうだ。

 そう考えざるを得ない要因は多い。まず、今すぐにITデバイスの需要が持ち直すとは考えづらい。1月の米雇用統計を見ると、依然として米国の労働市場は過熱気味だ。米連邦準備制度委員会(FRB)は忍耐強く、利上げを継続しなければならないだろう。利払いコストの増加などに対応するために、米国の企業は雇用削減を強化し、賃金上昇ペースは鈍化する。欧州でも利上げは続き、世界的にスマホやパソコンなどの需要がさらに下押しされるだろう。

 また、22年10~12月期、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)各社が減益に陥った。半導体メモリ需要を支えてきたデジタル家電だけでなく、サーバーやデータセンター関連の設備投資も絞られる可能性は高い。

 次に、米国は日蘭と連携して最先端の半導体製造に必要な製造装置の対中輸出管理を厳格化する。それは中国事業を強化したSKハイニックスに、負の影響を与えそうだ。

 加えて、SKハイニックスはこれまで顧客だった中国企業との競争激化にも対応しなければならない。中国企業は半導体メモリ分野で、共産党政権による支援を取り付けつつ生産能力の向上に取り組んでいる。

 半導体メモリ市場の競争激化は、インテルがメモリ事業を手放した要因の一つでもある。サムスン電子に続き、SKハイニックスの業績悪化が鮮明となったことが、今後の韓国経済の先行きをいっそう不透明にしている。