なぜSKハイニックスの経営が低迷しだしたのか
SKハイニックスの急速な業績悪化の要因の一つとして、製品価格の下落影響は大きい。22年10~12月期、DRAMとNAND型フラッシュメモリの価格は約3割下落した。世界全体でITデバイスの出荷台数が減少し、顧客企業では半導体メモリの在庫も積み上がった。今のところ市況悪化に歯止めがかかる兆しは見られない。
これは、SKグループにとって大きな痛手だ。SKグループは石油精製など重化学工業企業からの飛躍を目指して、ハイニックス半導体を買収し、SKハイニックスが誕生した。ハイニックス半導体は、かつての東芝などわが国企業から半導体メモリ関連の製造技術を習得した。
近年、SKハイニックスはキオクシアに出資しつつ、積極的に生産能力も拡張してきた。とりわけ20年10月、同社は米インテルから中国大連工場など半導体メモリ事業を90億ドル(1ドル=130円換算で約1.17兆円)で買収した。SKハイニックスはDRAMに加えてNAND型フラッシュメモリ分野の事業運営体制を強化し、世界トップクラスの半導体メモリメーカーになろうとした。SKグループ全体の成長加速のためにも、買収戦略は必要な取り組みではあった。
ただ、株価が上昇する環境下、汎用型のメモリ事業の強化を目指すSKハイニックスの先行きを懸念する投資家は徐々に増えた。そして今回の営業赤字転落によって、SKハイニックスは正念場を迎えている。収益を守るために、同社は22年比で設備投資を50%カットする方針だ。この判断はかなり思い切ったものといえる。
一方、需要鈍化に合わせて資本支出を削減しはするものの、成長期待の高い先端分野で従来の設備投資方針を堅持する世界の主要半導体企業は多い。成長を加速するために、世界の半導体企業にとって景気循環にかかわらず一定の設備投資を行う経営体力の重要性は、一段と高まっている。そのため、設備投資のブレーキを境に、SKハイニックスと他の半導体企業の競争力の格差が一段と拡大する可能性は高い。