韓国経済が世界「利上げ競争」で苦境に、ウォン安・インフレ阻止の“手詰まり感”Photo:PIXTA

世界的な利上げ競争が続くなか、韓国経済が苦境に立たされている。国際商品市況高騰によるインフレ高進に加え、輸入金額の増大で経常収支が悪化している。ウォン安も進み、防衛のための介入で外貨準備も減少している。先行きの不透明感は強まるばかりだ。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

商品市況高騰と中国経済減速で
韓国の経常収支が赤字基調に

 このところの世界経済を巡っては、中国の「ゼロ・コロナ」戦略への拘泥が中国景気のみならず、サプライチェーンを通じて世界経済の足かせとなっている。

 さらに、国際商品市況高騰による世界的なインフレを受けてFRB(米連邦準備制度理事会)など主要国中銀がタカ派傾斜を強めるなかで物価高と金利高の共存が欧米など主要国経済の重しとなっており、全体として景気減速が意識される状況にある。

 FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えている。なかでも経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国からの資金流出の動きが顕著になり、世界経済の不透明感を招く一因となっている。

 韓国は1990年代末のアジア通貨危機を受ける形で危機的状況に陥ったものの、その後の経済改革などを受けてここ数年は経常収支が黒字基調で推移するなど、経済のファンダメンタルズの改善が進んできた。

 しかし、このところの商品高による輸入金額増が進む一方、最大の輸出相手である中国景気の減速懸念は輸出の重しとなる形で足元の貿易収支は赤字基調で推移している。この動きを反映して黒字基調が続いた経常収支も赤字に転じるなど対外収支を取り巻く状況は急激に悪化している。

 経常収支以外にも、韓国経済が苦境に立ちつつあることを示す事象が複数ある。次ページからそれらを検証していく。