逆に仕事のできない人物に限って、些末なことに心を奪われ、そのたびに感情を乱しがちです。その結果、仕事のパフォーマンスも人間関係も悪くなる。まさに「負のスパイラル」に落ち込んでいくのです。

 米国のある面白い研究がありますのでそれをご紹介しましょう。

 感情コントロールは自己コントロールとほぼ同義と考えられますが、大学生の成績と30を超える性格特性との関係を分析したところ、学生の成績に関連する特性は「自己コントロール力」だけだということが示されました。

 さらに自己コントロール力は、学生のその後の成績を予測する方法として、IQやSAT(米国の大学進学適性試験)よりも優れていたそうです。

 ビジネスパーソンを調べた別の研究では、自己コントロール力のスコアが高い上司は部下からも同僚からも好意的に評価されていることが分かっています。

 つまり、頭の良さや仕事の能力以上に、自己、すなわち感情をコントロールできる人が社会的にも成功する。これらの研究からも、そのように言うことができます。

脳の構造からみた感情コントロール力とは

 ここで、脳の構造と感情との関係性についてみていきましょう。喜怒哀楽など感情のメカニズムを考える上で、脳の構造を把握しておくことも大きなヒントになります。

 そもそも情動とは、脳のどの部分が司っているのでしょうか?最新の脳科学によれば、喜怒哀楽などの情動は、大脳の古い皮質にある大脳辺縁系という部分で、生まれることが分かっています。

 一方、この情動=感情を統合し、時には抑える役割を担っているのが、脳の新皮質の中の前頭前野という部位です。本能的な反応である情動を客観的に把握し、コントロールする役割も担っています。

 つまり、感情コントロールが上手な人は、この前頭前野が活発に働いている人だと言ってよいでしょう。

心がザワザワした時の「一拍置く」技術

 よく耳にするのですが、みなさんは感情コントロール力を持って生まれた性格によるものだと諦めていませんか?

 それは大いなる誤解です。感情コントロール力は誰もが身につけられるテクニカルな「技」です。

 マッキンゼーでよく用いられる“問題解決のスキル”、じつはこれが感情コントロールにも役に立つのです。

 まず問題解決の手順は以下の通りです。

 1.真の問題を見極める → 2.問題の構造を把握する → 3.仮説を立てて検証する → 4.解決策を導き出す

 この4つの手順を感情コントロールに当てはめるとこうなります。

 1.感情を意識化し、冷静に受け止める → 2.感情が湧き起こった問題の構造を把握する → 3.どうしたらその問題が解決されるのかを仮説を立てて検証する → 4.解決策を導き出す

 これを、感情をコントロールする際のヒントにしてみましょう。怒りや悲しみ、不安や恐怖などの感情に、そのまま流されるのではなく、「なぜ、今、自分はこんなに怒っているのか?」「どうしてこんなに悲しいと感じるのか?」と自問自答する。そうやって一拍置くことで、冷静になり、前頭前野を働かせて、より適切な行動を取ることができるようになります。

 怒りなどの感情がフツフツと湧いてきたときこそ、感情コントロールを身につけるチャンスだと考えて、前頭前野をフル回転させることをためしてみてください。