オンライン会話での脳活動は「ひとりでボーッとしながら何も考えていない」状態と同じという驚きの実験結果【スマホはどこまで脳を壊すか】榊 浩平(さかき・こうへい)
1989年千葉県生まれ。東北大学加齢医学研究所助教。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)がある。

画面越しの会話はパラパラ漫画が相手のようなもの

 対面での会話とオンライン会話には、どのような違いがあるでしょうか?私たちが考えている、最も大きな影響を与えているであろう違いは、「視線」です。会話において視線を合わせることは肯定的な評価につながることが、多くの心理学研究で示されています。

オンライン会話での脳活動は「ひとりでボーッとしながら何も考えていない」状態と同じという驚きの実験結果【スマホはどこまで脳を壊すか】『スマホはどこまで脳を壊すか』
著・榊浩平、監修・川島隆太 定価935円
(朝日新聞出版)

 ビデオ通話の技術的な限界点としてもう一つ挙げられるのは、通信速度です。ネットワーク通信の技術の進歩は目を見張るものがあります。この数年の間でも通信の速度はかなり上昇しました。それでもなお、脳が行っている視覚情報の処理速度とは比べものになりません。現在の技術で作られる映像は、現実のものとはまだまだかけ離れているのです。脳からすれば、画面の中から語りかけてくる人は現実の「人」ではなく、パラパラ漫画の1コマに描かれたキャラクターの1人としか受け取ってもらえていないのかもしれません。

 今よりさらに技術が進歩して、ネットワーク通信の速度やパソコンなどの画面の性能が飛躍的に向上すれば、オンラインも対面と全く同じ条件になると言えるのでしょうか?映画「マトリックス」のような、現実と同じような仮想空間が実現した場合、私たちの脳はどのように反応するのでしょうか?私自身もとても興味があります。仮想空間へ最新の脳活動計測機器を持ち込んで、ぜひ実験してみたいと思います。

AERA dot.より転載