子どもたちの生活に着実に入り込んでいるスマホ。「脳トレ」でも著名な川島隆太先生率いる東北大学加齢医学研究所が2021年度に行ったスマホ保有率の調査では、小学5年生65.5%、中学3年生では88.4%を占めていた。同研究所では、10年以上前からスマホと子どもの学力の関係に着目。その驚くべき影響について、同研究所助教の榊浩平先生に教えてもらった。(2023年2月13日刊行予定『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋・再編集)
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使用時間が長くなるほど学力がどんどん低く
スマホの使用習慣は、子どもたちの学力にどのような影響を与えているでしょうか?【図1】は、スマホ等の使用時間と学力の関係を表しています。縦軸は標準学力検査から算出した偏差値で、平均点の子どもたちの値が50になります。横軸には、平日における勉強以外の目的でのスマホ等の使用時間をとっています。
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実際の質問項目は、「ふだん(月曜から金曜日)、勉強以外で1日当たりどれくらいの時間、インターネット接続ができる機器(スマホ・タブレット・音楽プレーヤー・ゲーム機など)を使っていますか」というものでした。パソコンやタブレットなどスマホ以外の機器を使用したインターネット接続も含まれていますが、実態はスマホの使用が大半なので、以降は代表して「スマホ等」の使用時間と表現することにします。
1989年千葉県生まれ。東北大学加齢医学研究所助教。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)がある。
グラフはスマホ等を持っているが「全く使わない」、「1時間未満」使用と、緩やかに高くなっています。ここまでの結果を見ると、「あれ?子どもにスマホを持たせた方がよいのかな?」と、思われた方もいるかもしれません。結果の見方には、少し注意が必要になります。
この結果の説明として、私たちは二つの可能性を考えています。一つは、スマホ等を「持っていない」グループには、経済的な理由で持たせることができないご家庭も含まれている可能性があるということです。悲しい現実ですが、家庭の経済状況と子どもたちの学力には、相関関係があることが明らかになっています。この点が「持っていない」と「全く使わない」の間の学力の差につながっている可能性があります。