種を芽吹かせるのは、あなたです。

 そのようにしてコツコツ種まきを続けていたところ、そこかしこで小さな芽が出始めました。僕がかつて置いた情報を、色々な方がことあるごとに引っ張り出すようになったのです。僕の所属するアレルギー学会の理事の先生までもが、「こんな記事があってね」と話してくださったこともありました。

 アレルギーについての新聞連載を始めると、これまでアクセスしたことのない年齢層の方たちにも情報を受け取ってもらえるようになりました。びっくりしたのは、担当記者の方が「アレルギーの仕組みを図解したいのですが、これで合っていますか」と持ってこられた下書きに、僕がずっと発信してきた情報が反映されていたことです。「伝わっていたんだな」と、うれしくなりました。

 数ヵ月前にはこんなこともありました。あるアレルギー患者さんのグループが、日々の業務に忙しい、これから専門医を取得しようと頑張っておられる先生方が、僕の著書をもとにした勉強会を始めたというのです。一度参加してくれないかと連絡をいただいたときには、本当にうれしかったです。

 僕が一般向けに書いた本を、専門医の卵の方たちが読んでくださったのです。かれらはそこからさらに、論文も読みたいけれど、それはそのような医師自身も大変だろうからと堀向のブログを勧めてくださっている。しかもそのブログを批判的に読む勉強会をされている。

 すばらしいと感心すると同時に、専門医にも一般の方にも届く記事が少しは書けたのかもしれないと感慨深かったです。

 結局、種を芽吹かせるのは発信者ではないのです。たまたま種に接した人が「これ、いいな」と受け取り、周囲の人と共有したときに芽吹いていく。芽吹かせるのは、種を受け取った方たちのほうです。

「SNS医療のカタチ」も、アイドルグループAKBのように、メンバーはどんどん入れ替わればいいと思っています。新しく情報発信を始められた医療関係者はたくさんいますから、最年長の僕は、そろそろ抜けてもいい。そうやって新陳代謝を行いつつ、息長く活動が続いていけばと願っています。

(※本原稿は、2022年8月20日、21日に開催されたオンライン配信を元に記事化したものです)