「一般の人たちに医療情報をやさしく伝えたい」。SNSで情報発信を続ける有志の医師4人(アカウント名、大塚篤司外科医けいゆうほむほむ@アレルギー専門医病理医ヤンデル)を中心にした「SNS医療のカタチ」。2022年8月「SNS医療のカタチ2022~医療の分断を考える~」というオンラインイベントが開催された。
生まれてから死ぬまで、どんな形であれ「医療」というものに関わらない人は一人としていないだろう。にもかかわらず、わたしたちと「医療」の間には多くの「分断」が存在する。そしてその「分断」は、医療を受ける人にも医療を提供する人にも大きな不利益をもたらすことがある。今ある「分断」をやさしく埋めていくために、また、「分断」の存在そのものにやさしく目を向けるために必要なこととはーー。イベントの模様を連載でお届けする。4回目は、「医療情報」との向き合い方について堀向健太氏(小児科学会専門医・指導医)が語る。(構成:高松夕佳/編集:田畑博文)

【小児科医ほむほむと学ぶ】根拠のある知識へのアプローチを考えるPhoto: Adobe Stock

まともな入口はわずか2割

 普段みなさんは、医療情報にどうアプローチされているでしょうか。お子さんがアトピー性皮膚炎で悩んでいる親御さんなら、本屋へ行って医療・健康本を見たり、ネット検索をしたりするのではないでしょうか。

 でもたとえばアトピー性皮膚炎に関する本できちんとした根拠に基づき書かれているものは2、3割しかない印象です。みなさんは「アクセスできる入り口がたくさんあって、どの扉に入ったらいいか迷うなあ」と思っていたかもしれませんが、まともな入り口はそのうちわずか2割というのが現状です。そして、入り口がまともなのかそうでないのかは、入ってみないとわかりません。

出典根拠を確認しよう

 対処法として僕がお伝えしてきたのは、出典や根拠がきちんと示されているかどうかを確認しましょう、ということです。

 出典とは、その論文を書くとき根拠にした他の論文やデータを記したもので、一般的に論文の最後に記されています。出典を確認することで、その論文が何を根拠にその主張をしているのかがわかり、論理的な正しさを測ることができます。医者を含む科学者は何かを読むとき、必ずこの出典確認を行っています。

 専門家でも読むのが難しい論文を一般の方たちに提示するわけにはいかないので、一般向けの医療健康本や医学記事の文章は、平易でわかりやすくなっています。

 でもそうしたものを読む際にも、できるだけ根拠となる記述に注目し、印をつけていくよう心がけていただきたいです。

 根拠が示されていても、その根拠自体が間違っているような怪しい記事もたくさんあるので難しいのですが、まず手始めとして「根拠に印をつける」癖をつけるというのは、記事の信憑性に気づくために有効だと思うのです。